甘党宣言

《赤》重岡大毅に彼女なんているわけない。 ページ4

〆．

重岡大毅に彼女なんているわけない。

〆．



みんなに内緒のバレンタイン。



まだ私たちの関係を公表していない時の話。



クラスはバレンタインの話で持ちきり。



ちなみに去年は大毅くんと違うクラスだった。



「やっぱ藤井にチョコ渡すん？」



「どうしよかな……義理！って言って渡そかな」



「ええやんかぁ、ラブレターつけても」



そんな会話の中に私が入れるはずもなく。



まあそもそも藤井くんって誰？状態だったので、特に興味もわかなかった。



「重岡は？」



「、」



突然、恋人の名前が出て心臓が嫌な音を立てる。



「重岡？あー、いいよね！ふつーにイケメンだし」



きゃはは、と笑い合うあの女子たちの中に、誰か、



大毅くんのことを好きな人がいるのだろうか。



もやもやして、イヤホンを耳にさした。



……………嫉妬、だ。



嫌な気持ちは消えなくて、放課後の待ち合わせ場所の駐輪場に行くのも、少し足取りが重かった。



「Aっ」



「大毅くん、お疲れ様」



当の本人は何も知らずに、へらへら笑ってるし。



………ごめんね、嫌な彼女で。重いよね。



バレンタインデー、大毅くんが他の女子からチョコを貰ってても、ちゃんと我慢しよう。



……そう、思っていたのに。



見てしまったから。



「これ、本命やから！」



「え、」



「手紙も入れといたし、絶対読んで！」



あんなに積極的に。……私、最近あまり好きとか言ってないな。



「A……？見てたん？」



「ご、ごめん」



学校では話さない約束。



見ていたの、気付かれたみたい。



慌てて逃げようとした私を大毅くんは引き止める。



「なんで泣いてるん……？」



「泣いて……る…？」



顔に手をやると、確かに私は泣いていた。



「…………ごめん、なさい。やきもちやいたの」



「へ？」



「大毅くんの彼女は私なのに、自信なくなっちゃうし………。そのチョコ、美味しそうだし」



「…………………」



大毅くんは目を丸くして、それから、口元を手で抑えた。



「……っば、めっちゃ嬉しい………」



「…………？」



「好きな子にやきもちやいてもらえるんは、嬉しいやろ。んもー、ほんま……どんなけ好きにさせるん」



大毅くんの腕の中へ。



学校なのに。女子に見られたらと思うと怖いのに。



ただ温もりが愛しくて、彼の背中に腕を回した。



〆．

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