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森田side
『私が悪いの』
『剛くんに迷惑かけたくなくて、マネージャーだから無駄な心配かけたくなくて』
彼女の目から、一度おさまった涙が再び流れ出した。
「俺はAに相談されて迷惑なんて思わない。心配はするけどそれは無駄なんかじゃない」
いつになく真剣に伝える。言葉を繕うのは得意ではないけどこれは伝えなければならない。
「だからさ、もっと頼ってよ。信頼して」
彼女はきっと自分に厳しい。それでいて素直になれなかったり強情だったりとにかく甘え下手だ。そして意外と涙もろい、彼女が泣いたのを見たのはこれが初めてじゃない。
「俺らだっていつもAに支えられてるんだから、俺らにも支えさせて。そうじゃなきゃ寂しい」
『でも、わたし、』
「お願い」
きちんと目を合わせて。
俺の精一杯の誠意が伝わるように。
彼女の涙は枯れることを知らない、涙が零れるたびに、彼女の瞳を腫らしていく。
〜〜
「…落ち着いた?」
『うん』
すっかり暗くなってしまった公園で2人、向かい合って座っている。
「そろそろ帰る?」
『うん』
立ち上がると俺のお腹の虫が鳴いた。
「腹減った」
『私も』
暗くなった道を2人で歩く。
『剛くん』
「ん?」
顔も見えない暗闇で彼女は小さく呟いた。
『ありがとう』
「いーえ」
V6ハウスに着くとなんだかオシャレないい匂いがしてきた。
「ただいま〜」
『ただいま』
前もってメンバーには事情を伝えておいたのでAの泣き腫らした顔を見て言及することもなくあたたかく迎え入れてくれる。
「おかえり、ご飯できてるよ」
キッチンに立っていた長野くんがニコニコと笑いかけた。
「なにこれ?」
レストランで出てきそうな料理に目を輝かせる。
「フレンチ料理を作ってみました〜、ずっと作ってみたくて」
長野くんがご機嫌に話し出したので半分耳を傾けながら食器など準備をする。
「…あ〜あとは、剛とAちゃんの仲直り記念に!」
食器を並べる手が止まる。
気にかけてくれてたんだ。じわりと心があたたまる感覚になる。
『長野くん、ありがとう』
Aもさっきより元気を取り戻しているようで良かった。
「じゃあ、食べよっか」
長野くんの音頭で合掌をする。
「いただきます!」
「「『いただきま〜す!』」」
あたたかい食卓を囲むことはこんなに幸せだったか、と密かに噛み締めたのだった。
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それ(プロフ) - みるくプリンさん» みるくプリンさんありがとうございます。前作でもコメント頂けて嬉しかったです!次のお話も気長にお待ちいただけると嬉しいです(^^) (2020年12月5日 22時) (レス) id: 11ffe0d4ff (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - 完結おめでとうございます&お疲れ様でした!いつも楽しく読ませて頂きました。新作も楽しみです。これからも頑張って下さいね。あ、右の星をポチらせていただきました~(*^^*) (2020年12月5日 17時) (レス) id: e740d416ca (このIDを非表示/違反報告)
それ(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが温かく見守って下さるとうれしいです! (2020年10月10日 16時) (レス) id: 11ffe0d4ff (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - とても面白いですね!続き楽しみにしてす!! (2020年10月4日 19時) (レス) id: f016a9c02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:それ | 作成日時:2020年3月22日 23時