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ライブが始まる。
さっきまでおふざけしていた人たちは円陣を組んで声を合わせると、颯爽とステージへと上がって見えなくなった。
私が先導する衣装替えや移動のときも以前より速やかに行えるようになった。
毎日1人で特訓した成果である。
ライブは地方が変わるごとに約1週間の間が空く。私は夜になるとV6ハウスを飛び出してランニングを積み重ねてきたのだ。
メンバーたちももちろん知っている。なんなら「一緒に走るよ」と手を挙げた人もいたが、外で一緒にいるのをバレてはまずいと私が危惧したことでしぶしぶその手を下げてくれたのだった。
確かに体力はついたのだが一つだけ問題があった。
それは、毎夜私の一定の足音と呼吸のリズムに着いてくる誰かの足音と呼吸。
最初は、私が夜にランニングをするのが日課になっているのと同じようにランニングをする人がいるのだろうと考えていた。しかし日に日にその人との距離、そして荒い呼吸が近付き、つい一昨日には怖くなって猛スピードでV6ハウスへと戻ったのだった。
「おい?」
『あ、すみません、こちらです』
移動のためにステージ裏へと戻ってきた剛くんは私が動かないのを不思議に思ったらしい。
移動しながら私に質問を投げかける。
「なんかあったの」
少なくとも私には心配しているように感じ取れるその声に、甘えてしまいたくなったが私のことで手間を取らせるわけにはいかない。
『いえ、何もないです!今はライブのことだけ考えててください』
目的の場所に着くと
「ライブ終わったら聞かせろよ」
と何もかもお見通しのように言って、再びステージ上へと消えていった。
その瞬間に沸き上がる黄色い歓声が上から聞こえてきて、やっぱり私個人の悩みなんて聞いてもらうわけにはいかない、と心を固めた。
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それ(プロフ) - みるくプリンさん» みるくプリンさんありがとうございます。前作でもコメント頂けて嬉しかったです!次のお話も気長にお待ちいただけると嬉しいです(^^) (2020年12月5日 22時) (レス) id: 11ffe0d4ff (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - 完結おめでとうございます&お疲れ様でした!いつも楽しく読ませて頂きました。新作も楽しみです。これからも頑張って下さいね。あ、右の星をポチらせていただきました~(*^^*) (2020年12月5日 17時) (レス) id: e740d416ca (このIDを非表示/違反報告)
それ(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが温かく見守って下さるとうれしいです! (2020年10月10日 16時) (レス) id: 11ffe0d4ff (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - とても面白いですね!続き楽しみにしてす!! (2020年10月4日 19時) (レス) id: f016a9c02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:それ | 作成日時:2020年3月22日 23時