三 ページ3
私は雨が嫌いだ。
雨が降ると気分が悪くなって、呼吸が苦しくなって、涙が止まらなくなるのだ。
理由は分かっている。
母だ。
母は雨の日に交通事故に遭った。
それも傘を差して待っている私の目の前で。
もうそれ以来病院に通っても症状が軽くなる事は無かった。
このショックはそう簡単に消えるものでは無いのだ。
***
「っあ、ぁ、うぅっ、……」
保健室のベッドで蹲りながら、泣く。
胸が痛い。張り裂けそうな程痛い。苦しい、辛い。何もかもが嫌になる。
「A、大丈夫だ、大丈夫。ゆっくり息を吐くんだ」
優しく背中を撫でてくれる。
撫で____え?
顔を上げると、杏寿郎さんも驚いている。
「Aに……触れられる…?」
「え」
そっと杏寿郎さんに手を伸ばすと触れられた。
雨の日になると触れられる…って事…?
その瞬間抱きしめられる。
「あの時…君の母親を守れなくて…本当にすまなかった…!!俺は君以外守る事が出来ないんだ…」
そして、守護霊には色々と制限があるらしい。
でも、杏寿郎さんを恨むのはおかしな話だ。
「…っ…」
「君が苦しむ姿を俺は見るだけだった……本当にすまなかった…だから今だけは……沢山俺に寄りかかって欲しい」
ギュッとまた抱きしめられて、私は杏寿郎さんの肩に顔を埋めて泣いた。
まるで兄が出来たみたいだった。
「ん…」
ゆっくり目を開ければ、杏寿郎さんがこちらを見た。
「まだ寄りかかっていなさい、今日は早退した方がいいんじゃないのか」
「……杏…」
言いかけて唇に手を当てられて止められた。
「俺の声は他の者には聞こえない。つまり、君は外から見たら独り言を喋っている事になる。だから、静かに」
小さく頷くと、満足そうに杏寿郎さんが頭を撫でた。
「いい子だ」
保健室のシングルベッドに私と杏寿郎さん二人で身を寄せ合って寝た。
とても体が密着して最初は緊張していたけど、だんだん慣れてきて、また杏寿郎さんに寄りかかって、引き寄せられて目を閉じた。
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丸(プロフ) - 三月の専属ストーカーなつめみくさん» こんばんは!この作品も私の笑いのツボを集結させておりますので、ツボが浅いと言われたら、私も同じです(/ω\)腹筋シックスパックだなんて!羨ましすぎます!私も沢山笑ったらシックスパックに…!?面白いと言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます!! (10月12日 21時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
三月の専属ストーカーなつめみく - さいしょのれんごくさんのよもや!とわっしょい!で吹きましたツボが浅いとか思わないでください。そして続きでまた吹きました。面白すぎて腹筋しっくすぱっくになりました。 (10月12日 21時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - 華さん» 華さん、いつも来てくださりありがとうございます…!夢主ちゃんは兄貴のことを家族のように思っていたので動揺が隠せないようです(*´-`*)しかしこの日を境に意識せざるえなくなるので、ここから動き出しますっ!こちらこそ、嬉しいコメントをありがとうございます! (2021年7月7日 11時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
龝(プロフ) - ゆうさん» 大切な読者さまであられる、ゆうさまにそう言っていただけて、嬉しいです(//∇//)ありがとうございます…!兄貴サイコーですよねっ。毎日楽しみにしてくださるなんて光栄ですっ!これからも気合いが入りますっ!素敵なコメントありがとうございました!m(_ _)m (2021年7月7日 11時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - あきちゃん、こんばんは(*´ `)兄貴、とうとう動きましたね。でも夢主ちゃんは兄貴の事を、恋愛対象としては見てないのかな…?それだと見守るしかない兄貴は辛いですね。続き楽しみにしています!素敵な更新ありがとうございました! (2021年7月7日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
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