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二十 ページ20






「はい」


不死川くんの声が聞こえた。


今まで一緒のクラスにもなったこと無くて、少し見てしまう。
私もよく高二までは出席日数が足りなくて、放課後進級の為に色々と課題をしたりしていたけど…。
不死川くんも度々職員室を出入りしているところは見かけたことがあった。


何となく少し仲間意識を持っていたのを記憶している。



HRが終わったが、不死川くんの周りには誰も寄らない。だけど遠くからでは、彼の噂話ばかりだった。


『体調不良ってほんとかな』

『絶対停学とかされてたんじゃない?ほら誰かと喧嘩したり、とか』

『アイツ絶対喧嘩してそうだよな』





不死川くんの耳にもきっと噂話は聞こえているだろうに。
彼は頬杖をついて、静かに窓の外を見つめていた。
その横顔に何となく吸い込まれそうになった。







***






放課後、杏寿郎さんと二人で歩きながら帰っていると、少し先を不死川くんが歩いていた。





「杏寿郎さん、話し掛けてみようかな…!」



小声で、杏寿郎さんに言うと、少し杏寿郎さんの表情が一瞬曇った。



「杏寿郎さん…?」
「…いや、話し掛けてみたらどうだ?」





しかし、それも一瞬、直ぐに頷いた杏寿郎さん。
私は後ろから「不死川くん!」と声を掛けた。
彼はゆっくり振り返り、私を見て、不思議そうな顔をした。



「あー、えっと、桜田さんで、合ってるかァ?」
「私の名前知ってるの!?嬉しい!」




まさか名前を覚えてくれていたとは思わなかった。
嬉しくて、ついつい気分が上がる。




「あぁ、桜田さんは噂とか気にしねェタイプなのか?」
「え?」
「いや、俺に話しかける奴ってなかなかいねェから。ましてや、女子はな」



不死川くんはそんな事を言って、また歩き出す。
私も隣に並んで歩く。




「噂は信憑性ないし、本人が居るんだったら、直接話し掛ければいいなと思ってる!だから噂は気にしないよ」




そう言えば、不死川くんは「そうか」とだけ呟いた。
少しだけの会話だったけど、不死川くんは噂通りの人ではなかった。むしろクラスメイトをちゃんと覚えてくれている人なんだなと思い、心が温かくなった。




「じゃあ、また明日!不死川くん!」
「あぁ、また」




彼は少し手を上げてくれた。
勢いよく手を振ると鼻で笑われてしまった。


でも、何となく楽しかった。

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(プロフ) - 三月の専属ストーカーなつめみくさん» こんばんは!この作品も私の笑いのツボを集結させておりますので、ツボが浅いと言われたら、私も同じです(/ω\)腹筋シックスパックだなんて!羨ましすぎます!私も沢山笑ったらシックスパックに…!?面白いと言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます!! (10月12日 21時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
三月の専属ストーカーなつめみく - さいしょのれんごくさんのよもや!とわっしょい!で吹きましたツボが浅いとか思わないでください。そして続きでまた吹きました。面白すぎて腹筋しっくすぱっくになりました。 (10月12日 21時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 華さん» 華さん、いつも来てくださりありがとうございます…!夢主ちゃんは兄貴のことを家族のように思っていたので動揺が隠せないようです(*´-`*)しかしこの日を境に意識せざるえなくなるので、ここから動き出しますっ!こちらこそ、嬉しいコメントをありがとうございます! (2021年7月7日 11時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆうさん» 大切な読者さまであられる、ゆうさまにそう言っていただけて、嬉しいです(//∇//)ありがとうございます…!兄貴サイコーですよねっ。毎日楽しみにしてくださるなんて光栄ですっ!これからも気合いが入りますっ!素敵なコメントありがとうございました!m(_ _)m (2021年7月7日 11時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あきちゃん、こんばんは(*´ `)兄貴、とうとう動きましたね。でも夢主ちゃんは兄貴の事を、恋愛対象としては見てないのかな…?それだと見守るしかない兄貴は辛いですね。続き楽しみにしています!素敵な更新ありがとうございました! (2021年7月7日 1時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年2月13日 19時

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