私の守護霊は過保護です。

十五 ページ15

「杏寿郎さん」
「…」



杏寿郎さんは深刻そうで、何か思い詰めたような表情を浮かべていた。
学校から帰って、家に着いてからもこの調子だ。



「杏寿郎さんってば！」
「むぅ！」



私が大きな声を出せば、驚いたように長い睫毛を揺らし、目を見開く杏寿郎さん。
何となく可愛いけど、それは置いといて。



「杏寿郎さん、ボーッとしちゃって、どうしたんですか！らしくないですよ？」



らしくない、と言っても、まだ杏寿郎さんとは一週間も付き合いはない。杏寿郎さんからしたらもう十八年の付き合いなんだろうけど。



「いや……その」
「杏寿郎さんとは運命共同体なんですよね？一緒に生きて一緒に死ぬ！隠し事はなしです！」




何となく苦しそうな杏寿郎さんを見ているのは嫌だったし、何とかして…話を聞くだけでも、杏寿郎さんの何かを軽減させてあげられたら、と思った。




「……いや、その、だな！今日のAは口の周りにチョコを付けたまま四限まで過ごしていたから、周りからどう思われていたか、心配になっていたんだ！！」
「え！？口の周りにチョコ！！？」




うそ、チョコついたまま授業受けてたの！？



「どうして杏寿郎さん言ってくれなかったんですか！」
「うむ、そんなAも愛らしいと思ってしまった！！」



杏寿郎さんはふわりと笑う。
笑顔になって良かった…と思ったけど！けど！



「杏寿郎さんの親バカ！」
「親バカとはなんだ！俺は君の親ではなく、守護霊だ！」
「守護霊ばか！」
「ばか、とは口が悪いぞ。A。それでは憧れの少女漫画的な青春には程遠いな」



そう言われ、口を閉ざすと、ふっ、と笑われた。



「全く、そんな顔するんじゃない」
「変態」
「うむ、なぜ変態なのか教えて欲しいな！」


ばか以外にどうすればこの気持ちを杏寿郎さんに伝えられるかな。



「過保護」
「うむ、過保護でいい！君の事は一生守る！」
「杏寿郎さんの顔を見たらダメだ」



顔が良いからつい許してしまう。
急いで顔を逸らした。




「なぜ？顔を見たらダメなんだ」
「そりゃあ、杏寿郎さん顔が良いから」
「む…！」




急に静かになった杏寿郎さん。
まさか、照れ＿＿＿？



「杏寿郎さん、照れてます？」



チラリと杏寿郎さんの顔を見て、固まった。



「杏寿郎さん？」
「照れてはいない！！断じて！ここは暑い！！ただそれだけだ！！」




顔を真っ赤にして、視点が合わない。
こっちまで暑くなってしまった。

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