炎の狂った愛を受け止めて。弐

ろくじゅう ページ10

「A、楽しかったか？」


車を運転しながら杏寿郎さんが聞く。


「もちろん、楽しかったですよ。ただ杏寿郎さんは随分とおモテになるようで？」



窓を開けて、風を浴びながら言えば、杏寿郎さんは目を細めて笑う。


「嬉しい、Aが嫉妬してくれている……＿＿＿＿いつも俺ばかりが嫉妬で狂わされているから」




最後の一言がなければ、笑いで済ませられるのになぁ……と思う。
狂わされている、って言葉が強すぎるよ。杏寿郎さん。



普通は逆になるはずなのに、杏寿郎さんの独占欲で逆転して杏寿郎さんの方が常に嫉妬している状況になってしまっている。



「ただ、君を傷付けてしまったのは本当に申し訳ないと思っている。今後は女性を近付けないように君の顔がプリントされた妻ですアピールができるTシャツでも着ようと思＿＿＿」
「やめてください、それだけはやめてください」
「なぜ？」




声を低くする杏寿郎さん。
低くするところ思いっきり間違っていると思います。



「私の顔を晒すなんて！！」
「むぅ！！……確かに……君は俺だけのものだから、顔なんてダメだ！！！その通りだ！！」




納得する所がズレている……杏寿郎さん。



「ならAにずっと隣に居てもらうようにしよう」
「え、えっと？ん？」



どういう事？
それじゃあ何も変わらなくないのでは？



「トイレも風呂もずっといっしょに居よう。A」
「……」




まずい、変な方向に行かせてしまった。




「杏寿郎さん、捕まっちゃいますよ！！」
「公用のトイレは使わないさ」
「えっ…？えぇ？」




杏寿郎さんは信号待ちの時に、ゆっくり私を見て、嬉しそうに目を細めた。




「ずっといっしょだ。死ぬまで。墓も二人で一緒に入ろう」




目が真っ暗で、心底心酔しきったような表情で私を見つめていた。




「そうですね、死んでからもずっと一緒に居ますよ」




優しく杏寿郎さんの手に触れれば、少し驚いた顔をした杏寿郎さん。
その後、頬を染めて、嬉しそうに前を向いた。






杏寿郎さんは愛してもらいたいだけ。
確かに他の人とは少し違ったものだけど、それでも彼は私を愛してくれる。

私が杏寿郎さんに合わせないと。

少し怖い時もあるけど。


私は杏寿郎さんが好きだから。

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