炎の狂った愛を受け止めて。弐

ななじゅうきゅう＊ ページ29

ぎこちなく杏寿郎さんに回した腕は、いつの間にか押し寄せる感覚に耐えるために必死に首元に腕を回し、しがみついていた。




「Aの耳朶は柔らかいな」




甘い声で囁かれ、舐められ、軽く吸われる。
水音がどうしても鼓膜を刺激して、杏寿郎さんにしがみつかなければ、変な声が漏れそうだった。




「きょう…じゅ、」
「安心しなさい。今日は君の体に負担をかけるつもりは無い」



優しく腰に触れられ、その後、また抱き締められる。



「おふろ…は別々…？」
「ふっ、そんなわけないだろう？君が一番よく分かっている事じゃないか」




嬉しそうな声が聞こえて、それから首筋に口付けられ、吸われる感覚がする。







「君の手入れは全て俺の役目だ。頭の先から爪先まで、全て」


吸った箇所を撫でながら、杏寿郎さんはさらに続けた。




「君は俺に縛られ続けて生きていく。俺は君を誰よりも一番に優先して愛し続ける」
「縛られ続けてる、だなんて、私が杏寿郎さんの傍に居ることを望んでいるだけです」



優しく杏寿郎さんの頬を両手で包み込んで、目線を合わせた。




「杏寿郎さん」
「むぅ……君は本当にずるい」




恥ずかしそうに目を逸らした杏寿郎さんだったが、また直ぐに目を合わせ、私の後頭部に手を回し、何度も何度も口付けた。

甘くて酔いそうな感覚にくらくらしていると、彼は満足そうに笑い、私を横抱きにして抱き上げた。




「風呂に入ろう。もう君はのぼせそうだから、そうだなぁ…今日はいつもよりも短めに終わらせようか」







＊＊＊



風呂から上がり、丁寧にケアをしてもらって、ベッドに入る。





「A」
「…杏寿郎さん…？」



杏寿郎さんに抱きしめられながら寝ていると、声を掛けられた。
微妙に胸元のボタンとボタンの間から手が入り込もうとしている点は杏寿郎さんを信じ、知らないフリをしておくとしよう。




「そろそろ君の服を買いに行きたいと思っている」
「え、私の服ですか？」
「うむ。外出用の服…あとは家での服…」
「私はもう服は要りませんよ…？この間も買ってきてくれたではありませんか」




杏寿郎さんは一ヶ月に一度のペースで私の服を買ってくるのだが、自分の服には全く頓着しない。
それどころか、私服は白Tシャツ一枚とズボン一枚で充分だと言う始末。

もちろん杏寿郎さんはそれだけでもカッコイイけど…。気になるところではある。

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