炎の狂った愛を受け止めて。弐

ろくじゅうはち＊ ページ18

「きょ、杏寿郎さん！！？」


風呂場に向かえば、ダラりとした杏寿郎さんが浴槽の縁に寄りかかっていた。



「杏寿郎さん、大丈夫ですか…！！」







何度も呼びかけると、荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくり目を開けた、杏寿郎さん。
頬はほんのり赤く、目もトロンとしており、正直に言って、これはまずい。







「本当に申し訳ないのですが、母が…」
「ん……分かっている…体がおかしくなったから……何となく、だ」
「大丈夫……じゃないですよね…」
「うむ……君にあまり触れられたくは、ないな。おかしくなる」




杏寿郎さんは苦しそうに荒い呼吸で私の手をやんわり離す。
その手はとても熱くて。
申し訳ないという罪悪感が胸に広がる。








「俺の事は……気にするな…風呂は後はボタンを押すだけだ……っはぁ、俺は和室に籠ってるから、決して開けるんじゃないぞ」






ユラユラと立ち上がり、歩き出す杏寿郎さん。
楽になれる方法＿＿＿＿そんなの、分かりきってる。




「杏寿郎さんっ、私が、」
「こういう物に頼ってっ、君を、＿＿＿＿したくはない」
「っ……！！」








杏寿郎さんは優しく笑った後、風呂場から出て、そのまま和室に籠ってしまった。





＊＊＊






その後、母と私は風呂に入り、杏寿郎さんを和室の外から風呂に入らないか呼んだ。
軽い返事があったから、母と私は寝室に入った。



でも、杏寿郎さんが心配で、胸が痛い。
母が盛ったものは、別に毒とかではない。そんなに心配するものでは無いのだけど。
それに『処理』してしまえば、なんでもない。分かっているけど。
杏寿郎さんの弱った姿を見てしまい、どうも以前の倒れた事を思い出してしまい、怖いのだ。



母と広いベッドに寝る。
母は遠くから電車やらで来たため、やはり疲れていたようで直ぐに眠ってしまった。





「……お母さん、起きてる？」






聞いてももうぐっすりだ。
私はゆっくりベッドからおりて、寝室を出た。




杏寿郎さん、杏寿郎さん！！
倒れていないだろうか……。大丈夫だろうか。
風呂場に向かうが、もうお湯は抜かれ、掃除された後だ。
つまり、今、杏寿郎さんは和室に居る。



もうリビングも電気を消されていて、和室も外から見るが電気を消されている。
寝てる？

寝顔だけ確認して寝よう。



そっと和室の引き扉を開けた。

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