炎の狂った愛を受け止めて。弐

ろくじゅういち ページ11

「ええっと、杏寿郎さん、職場の方にお土産、持って行ったりしませんか？」
「しない」
「えぇ！？」



つい驚きで固まってしまう。


「いや、あの、杏寿郎さん、日頃沢山お世話になっているでしょう？渡しましょうよ。ね？私、ちゃんと買ってきましたよ、杏寿郎さんの職場の＿＿＿」



言いかけて止めた。
杏寿郎さんの目が嫉妬に染まって真っ暗だ。



「君が買ってきた物を他の男に渡すわけないだろう。俺の物だ」



いや、カッコイイけど……嫉妬するところ少し違う気がする。
それも職場の人達からなぜか男、と変換されている。


「じゃあ、杏寿郎さん、こっちの饅頭はどうですか？二人で一緒に買ったものですよ？」
「……まだ、こっちの方が許せるな」
「分かりました！この紙袋に入れて持って行ってくださいね」
「…むぅ」


そっと背中をさすると、眉を下げる杏寿郎さん。


「職場の者達には君と買った思い出の土産ではなくて、通販でいいだろう」
「…杏寿郎さん、それはお土産ではないのでは……」


杏寿郎さんは変なところで拘っている。
でもこだわりを持つことは大切なんだけどね。


「そんなこだわりを見せる杏寿郎さんが大好きですよ」
「むっ！！」



目を丸くして、顔を赤くして、急に縮こまる杏寿郎さん。


「でも杏寿郎さんは優しい人ですから、皆さんに対しても気遣えると思っています。そんな杏寿郎さんがもっともっと好きです」
「…こ…この饅頭、職場の者達に持って行こうと思っていた……」
「やっぱり杏寿郎さんは優しい人ですね…大好きです」



杏寿郎さんは愛に飢えている。
ならば私も沢山言えばいいのだ。
昔は恥ずかしくてあまり言葉にしなかったけど、杏寿郎さんは沢山言葉にしてくれているのだから。



「A……そんな、俺は単純じゃないぞ……」


眉を下げて私に腕を伸ばす杏寿郎さん。



「単純……？そんなの関係ありません。私は杏寿郎さんが好きなだけです」



そっと杏寿郎さんに抱きつけば、嬉しそうな声が聞こえた。




「…君に触れられるだけで嬉しい…………っ、俺は単純だ」
「私もですよ。杏寿郎さんに触れられて嬉しいです」




杏寿郎さんと私はその後約一時間以上は抱き合ったままだった。





✲✲✲



こちらでも更新ついでに新作発表！

私の守護霊は過保護です。

良かったら呼んでくださると嬉しいです〜！

ろくじゅうに◇→←ろくじゅう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す