▼ utpr :【魘されて、幸せ】黒崎蘭丸 ページ7
ジャンルごちゃまぜ短編集の【とある休日に】の蘭丸主ちゃんです。
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「おい、大丈夫か」
仕事中、不甲斐ない事に高熱を出して倒れた。
マネージャーが家まで送ってくれた上に、蘭にも連絡をしてくれていたようだ。
深い眠りから目を覚ませば目の前には愛しの恋人。
『んー、らん』
「おう。なんか欲しいもんあるか?」
『まねじゃが買ってきてくれてるから大丈夫。それよりお仕事…、』
「ああ、それなら明日のもキャンセルしといたってお前のマネージャーが、」
『そうじゃなくって、蘭の』
「おれのは午前で終わりだって言っといたろ」
『うーん、そうだっけ?』
「はあ、とりあえず寝てろ」
呆れた物言いだけど、端々に愛情が篭もってるから蘭の言葉って大好き。…と、熱に魘されながらもぼんやりと思う。
蘭は僕のおでこにある濡れたタオルを外して、蘭が買ってきたであろう冷えピタを僕のおでこへと貼り付けた。ひんやりとした感触が心地よくて思わず目を細める。
「猫みてぇ」
『うっさい』
「食欲は?」
『ない』
「眠気は?」
『ないよ』
僕の横たわるベッドの縁に腰掛けて、布団の裾などを直しながらも時折優しい手つきで頭を撫でてくれる。少し汗ばんだ体に、蘭の少し低い体温が心地好い。
『らんまる』
「ん?」
『甘えたい、なんて言ったら、怒る?』
「…別に、怒らねーよ」
『じゃ、ぎゅってしていい?』
「ああ」
やはり蘭は呆れたように笑っていたが、その顔は決して呆れたようなものじゃなくて、心の底から愛されているんだと思えるぐらい愛おしみに溢れていた。ゆっくりベッドから上半身を起こして、蘭の腕の中へと収まる。
やはり少し低い体温がそこにはあったけど、不思議と心はぽかぽかと暖かく感じて、蘭の背に回した腕に自然と力が籠る。
『蘭、好き』
「知ってる、おれもだ」
『いつも我儘聞いてくれてありがとう』
「おう。なあレイラ、ちょっと離れろ」
『えー』
もう少しこのままがよかったけど、仕方がなく蘭から少し体を離してその顔を真っ直ぐに見据える。
ふっ、と蘭の口が弧を描いて、そのまま唇に柔く温かい感触…。そして直ぐに唇に少し冷たい空気が触れる。
「早く元気になれよ」
『…反則』
熱って案外、いいもんじゃないだろうか。
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作者名:たまの | 作成日時:2018年12月15日 19時