理不尽な押し売りの後日譚 ページ50
「……」
夜、真面目な顔をして紅丸は貰った櫛を見ていた。
確かに簪は嫌だ。武器として使えるが、間違うと頭皮に刺さる。
「いつ、使えばいいんだ……」
髪の手入れなんでする気も起きたことがない紅丸は悩んだ。
結局結論は出てこず、寝ることにした。
朝。
双子の髪を解くのに使った。
自分に宛てられたものだけれど、使うほどの髪は持ち合わせてないように思えた。
「お、やっぱり使ってる」
朝からみたらし団子を咥えている桜花。
そのお陰か。朝の弱い桜花の顔は不機嫌ではなかった。
「結局若様は使うほどの毛量はないだの、髪なんかテキトーでいいだろとか思うだろうと思ってたから」
「そーかよ」
なんだか嫌な気分になった。
双子の髪を終わらせ立とうとすると、強制的に座らせられる。
「あ？」
「ほい櫛頂戴」
手渡すと桜花は紅丸の髪を解かし始めた。
「女の子だから髪を大切にしなさいとは言わないけど、髪を解かせる機会はあってもいいと思ってさ、買ったんだよ」
伝わってないだろうけど、そう付け加えて桜花は紅丸の髪を結んだ。
毛量が少ないため、お団子にはできなかったがちょっとは結べた。
「はい完成。
髪を解かしてる時くらい浅草の破壊王でもない、ただの新門紅丸になってさゆーくりしようじゃないか」
「なんかウゼェ」
「うわぁまともなこと言ったのに。
そんなんだから顔面常に不機嫌なのでは？」
「あ？生まれつきだわ、もやし」
「もやしは仕方ないだろ！？」
「じゃあこの顔面も仕方ねぇじゃねぇか！！」
ぎゃあぎゃあ言ってると紺炉が食器を洗い終え、台所から出てくる。
まるで格好の獲物を見つけたように二人は飛びかかり、確保する。
「「ヒカ！ヒナ！やっちまえ！！」」
「合点！」
「承知！」
「なにすんだお前ら！？」
本日の犠牲者は一名。
紺炉は、ヒカゲとヒナタによってとても可愛い可愛い髪型になった。
「似合って、んふ、るよ、んふふふ」
「いいんじゃねぇか？へっ」
「お前らぁ……」
こうして貰った櫛は今もヒカとヒナの髪と、たまに紅丸の髪を解かしている。
「桜花ぁ、やれ」
「はいはい、お望みとあれば喜んで」
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作者名：文字変換 | 作成日時：2020年9月7日 10時
