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なにも残らない ページ9

「だ、ダーリンそれホント?私が来るまでレイさんを引き止めてくれてたの?」
「……そーだよ!ランちゃんのためなら僕、なんだってするよ〜」
「……ダーリン?その間はなんだっちゃ?」
変に間を開けたことに気づいたラムが恐ろしい目でこちらを見てくる。一気に背筋が凍る感覚を覚えながらも、俺は必死でとぼける。
「…いや何もないけど?」
「ダーリン!!ホントのこと言うっちゃ!ランちゃんに会いたくてレイを引き留めただけだっちゃね!!」
ラムが俺を掴んでぐわんぐわん揺らすと、「やめてラムちゃん!」とランちゃんがなみだめで声をあげる。
「ダーリンは私のためにレイさんを引き留めてくれたのよ?それなのにこんな仕打ちあんまりだわ!」
「そーだよねランちゃん。君は僕に会いたくてここまで来たんだよね」
「話が全然噛み合ってないっちゃ」
そして俺はそのままランちゃんに縋り付いたが、見事に雑に払われる。ランちゃんはこういう冷たいところも可愛いんだよね〜。
「ねぇレイさん、まだ……まだラムちゃんのことが好き?」
ランちゃんは切なげな眼差しで牛……じゃなかったレイを見つめる。レイは何故か人型に戻ると、ゆっくりと頷いた。その途端、ランちゃんは両手で顔を覆うと、崩れ落ちる。
「酷いわ、酷いわレイさん……私の気持ちを知りながらまだそんなことを言うのね」
「そうだっちゃ!こんなに可愛いランちゃんがいるのになんでまだうちに固執するんだっちゃ!!」
「そうよ!こんなに可愛いランちゃんがいるのに!!」
「……自分で言うのけ?」
「ラムちゃんが言ったんじゃない」
「まぁそうだけど……」
レイに振り向いてもらえないのはこういうところが原因なのではないかと思わなくもないが、それは言わないでおいた。ランちゃんは自分の可愛さに自信を持っていて、魅力のある女性だから。
「ランちゃん」
「なぁに?テンちゃん……」
「わいはまだ幼児やし恋とかよー分からんけど……あたるのアホからラムちゃん取り上げたらなんにも残らへん。だからランちゃん、なにがあってもレイを手放さないでほしいんや」
そのジャリテンのあまりに無礼な発言に、俺は文句を告げる。
「失礼な!俺からラムを取ってもガールハントが残るわい!」
「…言ってて悲しくないのけ?」
ラムの冷ややかな視線が俺に飛んだが、気付かないふりをした。

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作者名:如月フウカ | 作成日時:2022年11月2日 21時

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