じゅーきゅー ページ20
コナンくんはパトカーの後ろ姿をずっと見ていた。その瞳はパトカーに興味のある子どもの目ではなく、悲しみの目を向けていた。
俺はその姿を見て、瞬きを1つ。そして同じくパトカーの後ろ姿をサイレンの音を聴きながら見送った。
｢好きで暴力を奮う人はそう居ない。困っていてその結果が暴力となってしまう方が多いんだ。
保育者は、その原因となるものを知り、一緒にどうするべきか考えて、最終的な自己決定を本人にしてもらう。そしてその決定を元にどう支援していくのか、どの社会資源を活用するか。
……ただ、子どもたちを保育するだけじゃあないんだよ。｣
これで、キミの求めていたものは知ることが出来たかい？
そうこの子に微笑むと、視線が交わって、真っ直ぐな瞳で俺に返してきた。
あぁ、その純粋で輝く瞳には、俺の何を映しているんだろうか。
この瞳を、濁したくないなぁ……。
なんて考えていると、ちょんちょんと、裾を引っ張られた。
｢先生はさ、……その、…辛い体験って、したことあるの？｣
やっぱりその瞳は光り輝いて……。
｢……辛い体験、ねぇ……。ここは米花町だし、って言うのもあれだけど、ただ殺人事件だとか強盗事件だとかが多いだけじゃないんだ。目に見えるものはそれだけれど、米花町に限らず虐待って多いんだよ。
虐待の疑いによる通報だけでも多いのに、じゃあ明白になっていない虐待を数えるとどのくらいなんだろうね。その現状でこうした仕事だと、見つかるケースが多いんだよ。
…って、こんな話しても分からないかな。｣
｢え、っと……。｣
｢つまりね、コナンくんみたいな子どもを嫌っ！って突っぱねちゃうママやパパを先生たちはいーっぱい見てるから、それ思い出して少し悲しいんだよね。｣
コナンくんと視線が合うようにしゃがみ、少し眉を垂らして笑う。それを見てコナンくんはそうだよね、と強い意志で頷いた。
コナンくんの周りにはきっと、信頼できる大人がいるんだろうな。でなきゃこんな強い意志で頷かないと思う。その姿が、また俺の最初の担任を受け持ったクラスの工藤新一くんと重なった。
｢そう言えば先生、コナンくんにお隣の倉庫で話してた内容話してないよね〜？何で話の内容分かったのかな〜？｣
｢ぎ、ギクゥ…。
(やっべぇ〜先生の裾にさっき取った小型盗聴器付けて聞いてたなんて言えねぇ〜！)｣
｢ま、いいよ、帰ろう！｣
｢う、うん！｣
脳裏から離れない鳴り響くサイレンの音に、少しだけ耳を塞いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 286人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠衣(プロフ) - 深夜さん» 拙作をご覧いただきありがとうございます。申し訳ないのですが、私の方ではトラブル回避のためそういった事は行っておりません。よってpixivでの投稿はご遠慮いただけると幸いです。ご理解の程よろしくお願いいたします。 (2022年11月28日 22時) (
レス) id: 8996d6d5d2 (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣(プロフ) - ロシナンテ。さん» ご一読下さりありがとうございます。そ、それは……笑 名前が｢なるみ｣の方もいらっしゃいますものね、考えていませんでした……だいぶ個性的なお名前で素敵です笑 (2022年11月28日 22時) (レス) id: 8996d6d5d2 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - pixivで書いてもよろしいでしょうか？名前、タイトル変えます (2022年11月25日 12時) (レス) id: 880b7bddc6 (このIDを非表示/違反報告)
ロシナンテ。(プロフ) - 名前が成海だから名前がだいぶ面白いことに笑笑 (2022年11月24日 13時) (レス) @page1 id: 7c91679d8c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠衣 | 作成日時：2022年11月18日 6時
