じゅーはち ページ19
「……先生、おかえり。」
「ただいま、コナンくん。」
コナンくんは俺と一瞬目が合うと、気まずそうに目を逸らした。
「……あの、さ、先生……。」
「すみません。」
コナンくんが口を開いた時、男性が前から近付き声を掛けてきた。
「今大丈夫ですか?」
俺はちらりとコナンくんを見ると彼はにこっと笑ったので、きっと「いいよ」の合図だろう。俺は男性に向き合って大丈夫ですよ、と答えた。
「本当に、話を聞いてくれてありがとう。」
男性が勢い良く頭を下げて、こちらを見た。
その顔は、笑顔だった。
会って1時間も無いけれど、その間男性は1度も笑っていなかった。それが少しでも砕けた笑顔を初めて見る事が出来て、ようやく緊張が取れて少しだけだが力が抜けた。
そして俺も笑った顔で返す。
「自分は帝丹幼稚園で真人くんの担任をさせて頂いております、鳴海Aと申します。」
「……担任を…、……そうか。」
男性は驚いた顔をした後、すぐに納得したように目を閉じて俯いた。
「真花さんへの暴力はDVに当たりますし、例え真人くんに手を出していなくとも、その光景を真人くんに見せてしまえば心理的虐待になってしまいます。その事実は変わりません。」
「…………。」
「ですが、きっとあなたも1人で耐えてきたのでしょう。暴力に耐え、それを話せない痛み。そういった苦しみは、とても理解できます。……大変だったでしょう。」
「……っはい、」
「では、これから先の未来は、どうしたいですか?」
「っ2人と、真花と真人と、ちゃんと、話をしたい、です……。」
「自分でしたいことを、素直に言葉に出来るって、案外難しいんです。それを出来ることって、素敵な事ですよ。
園にいらっしゃる、もしくは電話してくだされば、いつでもご相談にのります。我々保育者は地域支援や家族支援も、大切なお仕事の1つですから。
それまで、ゆっくり心を休めてくださいね。」
「はい、…ありがとうこざいますっ。」
そうしてお互い顔を見合せて笑った。
まだまだ表情は硬いかもしれないが、少しでも蟠りが取れたような、すっきりした顔だったため安心して、俺はまた笑った。
「真人は、良い先生に当たったんだな……安心、しました。」
そう言って男性は、真人くんのパパは、パトカーに乗ってここを離れた。
日はもう沈んで静かな夜の街が目に映った。
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瑠衣(プロフ) - 深夜さん» 拙作をご覧いただきありがとうございます。申し訳ないのですが、私の方ではトラブル回避のためそういった事は行っておりません。よってpixivでの投稿はご遠慮いただけると幸いです。ご理解の程よろしくお願いいたします。 (2022年11月28日 22時) (レス) id: 8996d6d5d2 (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣(プロフ) - ロシナンテ。さん» ご一読下さりありがとうございます。そ、それは……笑 名前が「なるみ」の方もいらっしゃいますものね、考えていませんでした……だいぶ個性的なお名前で素敵です笑 (2022年11月28日 22時) (レス) id: 8996d6d5d2 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - pixivで書いてもよろしいでしょうか?名前、タイトル変えます (2022年11月25日 12時) (レス) id: 880b7bddc6 (このIDを非表示/違反報告)
ロシナンテ。(プロフ) - 名前が成海だから名前がだいぶ面白いことに笑笑 (2022年11月24日 13時) (レス) @page1 id: 7c91679d8c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠衣 | 作成日時:2022年11月18日 6時