Episode 3 ページ10
「ただいまー」
あれから教室に戻り、いつも通り授業を受けて家に帰ってきた。
……否、正しくは、「爽の家にお邪魔している」だけど。
まだ爽は帰ってきていないらしく、自分の発した声だけが寂しく余韻を残した。
現在、本来の私の家には姉一人しかいない。もっとも、毎日のように友達を連れ込んで遊んでいるようだが。
両親は揃って海外で仕事をしていて、ここ数年は会っていない。最後に会ったのは姉の中学の卒業式に帰国してきたときだろうか。
爽の両親は、というと、航空関係の仕事に就いていて家をほとんど開けているらしい。
つまり、今現在、爽の家には私と爽の二人で住んでいる。
付き合ってもいないのに同棲なんて危ない__そう言われるかもしれないが、今の私たちにとってこれは寧ろ好都合な状況だった。
何故なら。
姉は、私が今どこで寝泊まりをしているか知らない。
__つまり、歌い手の活動はもちろん、姉を潰すための計画や準備をするのにもってこいの条件だ。
この好機を逃すわけにはいかない。
爽の帰りを夕ご飯を作りながら待っていると、私が帰宅してから約1時間半後に爽も帰ってきた。
「お帰り、爽」
「ただいま。あー面倒だった……」
はぁ、と溜息を吐く爽に事情を聞くと、どうやら先生に捕まって明日の授業で使う資料のプリントまとめを手伝わされていたらしい。
先生の頼みごとを聞いて、何かしら理由を付けて逃げようとしたらしいのだが、傍にいた女子生徒に「一緒に手伝おうよ」と半ば無理やりに巻き込まれてしまった、と。
大方、爽と一緒に過ごせる時間が延びるから、というのがその女子生徒の目的なのだろう。
「お疲れ。人気者は大変だね?」
くすくす笑いながら言うと、馬鹿にすんなと頭を小突かれる。
「はいはい笑わない。……あ、そうだ、今日あいつに会ったでしょ?」
「えっまあ、ね。何で知ってるの……?」
爽の言う「あいつ」とは、姉のこと。爽は断固として姉のことを名前で呼ばないらしい。同じく、私も姉のことは名前で呼ばない。名前を出すことすら嫌になるから、と私も爽も自然と名前を呼ぶことはなくなった。
「人気者の情報網は凄いんだよ。さっき女子が教えてくれた」
さっき人気者を馬鹿にした私を見返すかのような得意げな返事が返ってきた。
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らむね - え…すこ← (2020年6月8日 22時) (レス) id: 9e28ad89d2 (このIDを非表示/違反報告)
りょうか@狂花水月(プロフ) - ゆーひさん» 忘れるわけがない笑笑 嬉しいって言ってくれると私もすごく嬉しいです◎ ありがと!!更新頑張ります(`・ω・´)b (2020年4月9日 17時) (レス) id: 2fccda524d (このIDを非表示/違反報告)
ゆーひ - よかった!覚えててもらえた!!笑 またりょうかの小説読めて嬉しい!更新頑張ってね! (2020年4月9日 14時) (レス) id: b9150210a3 (このIDを非表示/違反報告)
りょうか@狂花水月(プロフ) - ゆーひさん» え待ってゆーひ?!めっちゃ覚えてるよ……!!実は大好きな作者さんが最近復帰してて、それ読んだら私も復帰したくなっちゃったんだよね笑笑 ありがとうございます……(´;ω;`) (2020年4月8日 23時) (レス) id: 23902dfb1a (このIDを非表示/違反報告)
ゆーひ - なんとなく占ツクみてたら、復帰しててびっくりした!!私のこと覚えてるかな・・・?リメイク版も素敵でした♪ (2020年4月8日 21時) (レス) id: b9150210a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りょうか@狂花水月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/a812e7560b/
作成日時:2020年3月31日 13時