【悪女主】裏表二人【S.o.u】【リメイク版】

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「えっと……？」
「あー……急にごめんなー？ちょっとわしの好きな歌い手さんに声似てて」

困惑している私に、申し訳なさそうに手刀を作って謝る響先輩。
いつの間にか、響先輩はしゃがんで、座っている私に目線を合わせてくれていた。

ここは、うんと頷いていいのだろうか……。否、止めておいた方がいいのか……。
自問自答を繰り返して頭の中で出た答えは一つ。

「そうなんですね。私は特に……そういった活動はしていませんので、響先輩の勘違いだと思います」

ふわっとした笑顔で答えれば、ほんならあんまり気にせんといていいよ、と気を遣って言ってくれた。

そもそも響先輩は、姉の取り巻きの一人だ。本当のことを言って、姉に暴露されたらたまったものではない。


「あぁ、そうだ、Aちゃん！わしのこと、響先輩なんて硬い呼び方せんでええからな〜。気軽に棗って呼んで！」
お互い何も言わなくなって気まずくなったのか、響先輩が思い出したように口を開いた。

太陽のように眩しい笑顔で私を見つめてそう言う響先輩の気迫に負けて、最初は先輩だから……と言い淀んでいたのにも関わらず、結局、お互いに妥協して棗ちゃんと呼ぶことになった。


いくら人が好いとは言え、先輩＿＿ましてや姉の取り巻きと仲良くなりすぎると危険だ。そう、本能が告げている。


気が付けば予冷が学校に鳴り響いていた。その音を聞くなり、棗ちゃんが弥生んとこに戻らないと！と、別れの言葉を告げる間もなく走って戻っていった。

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