じゅうご ページ16
運転手と警察官二人に別れを告げた碧達一行は、道なりに進み空港へ。
何度も訪れたことがあるサイパン国際空港内は特に変わった様子もなく。
日本経由の英国行きの飛行機を三席取った三人は、特に手荷物検査で引っかかることもなく搭乗を可能とした。
なお、検査官と碧は知り合いだったうえ、あの幸薄い英国紳士を疑った人物と同じというのだから縁というものは奇妙である。
座席は左翼側の窓側三席、何かがあれば死亡率が高い席でもある。
「席順、どうしようか」
「ここはレディーファーストとやらでいきたいが、あえて言わせてもらおう。余は窓側に座りたい」
「わ、私は通路側で問題ないのだわ」
特に席に拘らない碧と、窓側に座りたい征服王、できれば窓側に座りたいけど強く言えない冥界の女神。
じっとエレシュキガルを見た碧は、頷くとイスカンダルにエレシュキガルが窓側に座るということを伝える。
「行きはエレちゃんに座ってもらおう。帰りはイスカンダルが座っていいから」
「仕方がない。女神よ、座られよ。だが、帰りは余が窓側の席に座らせてもらう」
「あ、ありがとうなのだわ」
少し嬉しそうに、窓側の席に着席したエレシュキガルは、飛行機の羽を興味深そうに見ていた。
その隣に碧が座り、通路側にイスカンダルが着席。
座席の前に案内書が置かれており、イスカンダルは興味深そうに手を取ると読み始めた。
「エレちゃんは飛行機初めてだっけ」
「そ、そそそんなことはないのだわ」
実際、エレシュキガルとしては初めてである。
確かに依代の少女としては飛行機は何度も経験しているだろうが、女神としてのエレシュキガルとしては何をするのも真新しい。
だがしかし、女神としての矜恃ゆえか見栄をはってしまう。
「そっか。でも、急激な気圧変動で耳に違和感が生じるかもしれないから、飴か何かをもらってくるよ」
「そ、そうだったわね。じゃあ、お願いしてもいいかしら」
「わかった」
座った席を立ち、碧はキャビンアテンダントの元へと向かう。
既に乗客は搭乗を全員完了しているのか、入乗してくる人達はいなく、むしろ通路に土産や手荷物を上部にある荷物入れへ入れている人達が多い。
だがしかし、点々と明らかに旅行者としての風貌ではない人達が数名、見受けられるため少しばかり警戒すべきだろう。
と、碧は思うはずもなく。
彼は無事に色とりどりの飴を五個程キャビンアテンダントからもらい、席へと戻る。
飛行機はもう少しで空へと飛び立つ。
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