知られたくないこと ページ6
.
「おはようございます」
「あ、おはようございます、蒼園さん。体調は大丈夫ですか？」
「はい、ご迷惑をおかけしました…」
肩を竦めて笑うと、
自宅からほど近い県立図書館、そこが私の職場だった。利用者は決して多くはない。このご時世、電子書籍が流行って図書館の利用率はどんどん下がっている。
だけど、永見さんは仕事も上手で、私の尊敬出来る先輩。先輩のおかげで、この図書館は生きているようなものだと思う。
「そういえば、どうですか？幼なじみさんとは」
「ちょっ、永見さん！？」
にこにこと笑う永見さん。
……う、悪魔だ！
「何も、ないですけど…なんならこの前普通に看病してくれましたけど」
「その幼馴染さんも大変ですねぇ…」
「…すみません、その大変ですねは何に対しての大変なのでしょうか？」
私がそう言うと、永見さんは小さな声で楽しげに笑った。
やってきた女の子に本の貸し出しの手続きを行い、女子中学生2人組に本の場所について聞かれ、と私の仕事は進んでいく。
利用者が居なくても仕事はあって、破れたページを直したり、返却された本を戻したりしなくちゃならない。
「私お昼終わったので、蒼園さんもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
先にご飯を食べていた同僚の人に声をかけられ、カウンターから立ち上がる。
裏に入って、お昼を食べに外へ出る。
街の喧騒は図書館の中の静けさとは全然違う。
長年勤めている永見さんはよく、図書館って少しだけ現代から切り離されて、誰も知らない知識の森に呑み込まれているみたいですよね、なんて言っている。
一体普段どんな暮らしをしていたらそんな例えが出来るんだろうか。
近くのカフェに入る。
軽いものを頼んで、私はスマホを開いた。
Aお腹空いたー
Twitterに呟くみたいに一言そう送れば、少しして既読がついた。
大こちとらまだ仕事中やけど!?!?
大俺も腹減ったわ
画面の向こうで呆れた顔をしている大の顔なんて易々と思い浮かぶ。
私は思わず顔だけ机にうずめた。
「んんん……好き……」
一体何年来の付き合いだろうか。
ずっと、ずっと好きだった。でも、大は昔っから女たらしで、ガールフレンドなんて絶えなかった。
看病して、なんて子供じゃあるまいし。
…襲ってくれればいいのに。
罪悪感と一緒にずーっと依存しちゃえ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梅餅(プロフ) - ふわ丸さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて感謝の限りです！ (7月22日 11時) (
レス) id: 19098535e6 (このIDを非表示/違反報告)
ふわ丸(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです！！！ (7月21日 18時) (レス) @page32 id: 3811a438d9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梅餅 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/12Saku111/
作成日時：2020年6月14日 17時
