温もり むそじ ページ10
*
「・・・え?」
泣い、てた?
翼が、泣いてた・・・?
「普段、私の前で全く泣かない翼が、泣いてたの」
お母さんは目を伏せるようにして話を続ける。
「あの子、これで良いんだよね?って私に聞いてきたの」
「これで、悲しまないよね。もう俺の為に泣かないよねって」
自分が呼吸を忘れていることに気付いた。
何も言えない。何も出来ない。
まるで時間が止まっているようにも感じる。
『その人がした事は、全部お姉ちゃんの為だよ』
『離れておかなきゃ、自分が死んじゃう時にお姉ちゃんを悲しませるから』
『お姉ちゃんが大切だからこそ、お姉ちゃんから離れたんだよ』
ふと、奈子の言葉を思い出した。
「たぶん、これって彩ちゃんの事だよね」
お母さんは目を上げて優しい眼差しでこちらを見つめる。
綺麗な瞳を涙で濡らしながら。
「翼は、彩ちゃんの事を本当に大切にしてるみたい」
私の瞳から、いつの間にか溜まっていた涙が溢れた。
「きっと、彩ちゃんが大好きなんだよ」
『きっとその人、お姉ちゃんの事が大好きなんだよ』
お母さんと奈子の言葉が重なって聞こえる。
「だから、お願い」
お母さんは涙を一筋、頬に流した。
「どんなに翼に突き放されても」
また一筋、涙が溢れる。
「どんなに翼を信じられなくなっても」
溢れる涙は、止まることを知らない。
「最後まで、翼を愛してあげて」
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時