貴方の腕の温もりが

温もり ここのそじ あまり ここのつ ページ49

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翼は首を振りながら僅かに微笑んだ。









　









「彩と、出会えて良かった」









　









「彩を好きになって、良かった」









　









やめてよ、聞きたくない。




なんだかお別れの挨拶みたいじゃない。









「・・・彩、こっち、来て」









泣きそうになりながら翼の側によった。




ベッドに腰掛けると、そっと何かに包まれる。









　









「・・・え？」









　









それは、動くはずのなかった翼の腕で。




自分が抱き締められていると気付くのにかなり時間がかかった。




どうして、動くの・・・？




なんで、と聞こうとした時 翼の腕は私の身体から離れていった。




翼が荒い息を繰り返している。









「なんで、こんな事・・・」









翼は優しく微笑んで 何かを言おうとした。









その瞬間、心電図のアラームが鳴り始める。




・・・う、そ。




私は慌ててナースコールを押し、ベッドをもとに戻した。









「翼っ、翼・・・！」









看護師さんが病室のドアを荒々しく開ける。




そこへ先生とお母さんも駆けつけて来た。









　









「・・・彩」









　









翼は先生達に治療を施されながら私の名前を呼ぶ。




至極、穏やかな笑みを浮かべて。









「何っ？何・・・？」









すがり付くように答えると、翼が優しい声で言葉を紡いだ。









　









　









　









「来世でも、愛してる」









　









　









　









それが、彼の最後の言葉だった。

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