温もり ここのそじ あまり よっつ ページ44
*
私が泣き止むと、お母さんは私を残して病室を出ていった。
あれ、どうしたんだろう。
「ちょっと先生とお話ししてくるわね」
「翼の目が覚めたら、ナースコールお願いね」
私が頷いたのを確認すると、お母さんはドアを閉めて歩いていく。
私はその視線をベッドで眠る翼に移した。
・・・ねぇ、翼。
手術は成功したんでしょ?
それじゃあ、これから一緒にいられるんだよね。
ずっとじゃないかも知れないけど、何年かは一緒に。
ひょっとしたら呼吸器の寿命までに治療法が見つかるかも。
そうなったら、病気も治って・・・
「・・・っうぅ」
なんて、上手くいったらいいのに。
ドラマみたいに奇跡が起こって。
ドラマみたいに運命なんてひっくり返して。
ドラマみたいなハッピーエンドが迎えられたらいいのに。
どんなに安っぽいドラマの展開でもいいから。
「・・・ずっと、一緒に生きていけたらいいのに」
叶いっこないのに願ってしまう。
起こりっこないのに信じてしまう。
奇跡なんて、簡単には起こらないのに。
「翼、翼。ねぇ、翼・・・」
「・・・お願い、いなくならないで」
そんなの無理だと分かってる。
助かりっこないんだって分かってる。
それでも、諦められないんだ。
「あ、や・・・」
微かだけれど、ハッキリ聞こえたその声。
私の名前を呼んでいる声。
心当たりなんてひとつしかない。
「・・・翼、翼っ!」
ベッドに身を乗り出して彼の名前を呼ぶ。
閉じられていた瞳は 僅かに開けられていた。
瞼の奥に見える翼の瞳は濡れている。
泣いて、るの・・・?
「彩。ごめ、ん。ごめん」
ナースコールを押すのも忘れて、翼の声に耳を傾けた。
翼の声は酷く掠れている。
「俺、もう⎯⎯⎯ 」
小さく呟かれたその言葉は、ドアの音によってかき消された。
「彩ちゃん、翼はどう?」
ドアから入ってきたのはお母さん。
お母さんの後ろには担当の先生もいる。
「今、丁度目が覚めたところです」
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時