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温もり ここのそじ ページ40






同日同朝、病室にて









「・・・朝、か」









ひとりの少年が窓の外を眺めて呟く。




しかしその声は酷く掠れていて、聞き取る事も困難だった。




その少年は自嘲じみた笑みを浮かべて目を伏せる。




そして、自分の両足を見つめた。









「・・・は、はっ」









少年は手で布団を退けると 自分の両足に手を添える。




そしてもう一度、掠れた笑いを溢した。









「も、全く、動かないじゃん」









力を入れても微動だにしない両足に笑いしか出なかった。




怒りも、苛立ちも、悔しさも通り越してしまった。




少年の心に残るのは、僅かな悲しみと諦めのみ。




今までリハビリでなんとか保ってきたが 崩れるのは一瞬だった。




少しの間 寝たきりの状態だっただけで動かなくなってしまう。




もう、少年の身体は限界だった。




それを少年は悟っていたのだ。




自らの身体が動かなくなるのを感じ、気付いたのだ。









 









“自分はもう長くない”と









 









手術が成功してもダメなのだと。




未来は、ないのだと。




だから少年は愛する少女を突き放した。




少女を守るためでもあり、自分のために。




少女を残していってしまうと言う哀しみから逃れるために。




誰よりも愛する少女に、涙を流させないために。




けれど。




その抵抗も虚しく、少女は戻ってきてしまった。




少年も最後まで拒む事が出来なかった。









 









少年は悟った事をまだ誰にも話していない。




否、話せなかった。




大切な家族に。愛する者に。かけがえのない仲間達に。




話してしまえば、彼らが涙を流すのは当然の事だから。




涙なんて見たくない。




自分のせいで涙を流してほしくない。




その思いが少年を縛り付けていた。









 









きっと、少年の本当の思いを知る者は誰も現れないだろう。




少年が悟り、悩み、苦しんだ事を。




誰にも話す事が出来ず、ひとりで抱え込んでいた事を。




知っているのは少年のみ。




己を犠牲にして、周りを守ろうとした強い少年のみ。

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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/  
作成日時:2018年3月22日 15時

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