貴方の腕の温もりが

温もり やそじ あまり やっつ ページ38

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玄関まで見送りに来てくれたお母さんと僅かに言葉を交わす。









「・・・明日、翼の手術なんですよね」









お母さんは静かに頷き 笑ってみせた。




心配はいらない、と言うように。









「あの子なら大丈夫よ」









キッパリと言い切ったお母さんに私は目を見開く。




どうして、そこまで言い切れるんだろう・・・？




私の考えを見抜いたようにお母さんは笑った。









　









「翼が彩ちゃんを置いていく訳ないでしょう？」









「あの子ったら、彩ちゃんの事大好きなんだもの」









　









翼の考えている事なんてお見通しだ、と言うように平然と言ってのける。




・・・やっぱり、親子の絆って凄いんだなぁ。




お互いの考えている事なんて離れていても分かるんだ。









「・・・そう、ですね」









“翼が私を置いていく訳がない”




・・・明日の手術はそうかもしれない。




けれど、翼はいつか・・・




ふと嫌な考えが頭をよぎった。




そんな私を見て、お母さんが目を伏せる。









　









「・・・大丈夫、大丈夫よ。絶対、大丈夫」









「あの子は、そんなに弱くないから。強い子だから」









「私達は信じて待てば良いのよ」









　









私はお母さんに頷き、玄関のドアに手をかけた。









「すみません、お邪魔しました」









笑顔で手を振ってくれるお母さんに軽く頭を下げて外に出る。




傘も忘れないようにしっかりと持って。




家の前の門扉を通り、自分の家に向かって歩き始めた。









段々と日が落ちてきて黄昏に染まる空。




そこからまた、茜色に変化していく。




空も雲も、全てが赤く染まっていった。









「・・・綺麗」









少し時間が経つごとに色を変えていく空。




しばらく空に見とれて立っていると、もう夕暮れが終わりそうになっていた。









もう、帰らなきゃ。









空を見上げていた顔を下げて前を見据える。




・・・明日なんて、来なければいいのに。




日が沈み、辺りが暗くなっていった。




足取りがとてつもなく重たい。




早く家に着いたら、明日が来るのが早くなっちゃう。




帰ったらすぐに寝てしまうだろうから。




早く寝ちゃったら、次に起きたら朝になっちゃうから。









・・・明日が来なければ、不安で押し潰されそうになる事なんてないのに。

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