貴方の腕の温もりが

温もり ななそじ あまり いつつ ページ25

＊




私は翼の病室を出て、目を閉じる。









・・・これで、良かったんだよ、ね。









翼に突き放されても、私は翼から離れない。




“別れよう”と言われたけど、それは形だけ。




・・・これは。別れたのは。




翼のけじめだから。翼の覚悟だから。









・・・私が邪魔しちゃ、ダメなんだ。









形だけが変わった。それだけ。




私は自分にそう言い聞かせた。









形が変わっても、私の気持ちは変わらない。




お母さんに背中を押してもらったから。




翼の側にいると決めたから。









　









・・・翼が、好き。









　









何があっても この気持ちだけは変わらない。変えられない。









「・・・もう、帰ろ」









これ以上長居する必要もない。




私は閉じていた目を開け、歩き出した。




とりあえずお母さんの所へ帰らないと。




チラリと時計を見るとまだお昼過ぎ。









「・・・おなか、すいたなぁ」









そう言えばご飯を食べていなかった。




朝から翼の家に行って それっきり。




朝御飯を食べているものの、お腹はすく。









　









「次のバスまで結構ある・・・」









　









呑気な事を考えながら歩いていると、バス停に着いた。




しかし バスは行ったばかりのようで待ち時間がかなりある。




・・・ついてないなぁ。









「はぁー・・・」









ため息をついて辺りを見回した。




どこか休める所、ないかな・・・




さすがに何十分も外で待つのはしんどい。









「んー・・・」









よく目を凝らしながらキョロキョロしていると、本屋さんを見つけた。




本屋と言っても、どうやら古本屋のようだ。




丁度 向かい側にある細道を入った所にある。




側に歩道橋を見つけて向かい側へ渡った。









「・・・こんなとこ、あるんだ」









古本屋の前に立ち、見上げる。




決して大きいとは言えない程の広さ。




しかも店の正面まで来ないと開いているのか分からなかった。




立て看板も出ておらず、屋根付近に店名が書いているだけ。




それも薄汚れていて文字が読みにくい。









「えっと・・・」









なんとか解読して読めた文字。









“古書堂 ゆめみぐさ”









なぜかは分からないけれど、強く惹かれた。

温もり ななそじ あまり むっつ→←温もり ななそじ あまり よっつ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す