貴方の腕の温もりが

温もり ななそじ あまり ふたつ ページ22

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翼と、初めて恋人らしい事をした。




きっと今までは私のために我慢していてくれたんだ。









「た、すく」









体を離して翼を見つめる。




どうして急に翼がこんな事をしたのか分からない。









「ごめん、アーヤ。ごめん」









けれど、翼の余裕のない表情を見れば そんな事どうだっていい。




苦し気に歪められた瞳からは涙がいくつも流れていた。









「本当は、離れてほしくなかった・・・」









翼は力を失ったようにベッドにもたれ掛かる。




身体中の力が抜けていったようだった。









「アーヤを離したくなんてなかった」









翼は静かに涙を流しながら私を見る。









「けど、離れないと・・・離れておかないと」









もどかしそうに、私を見つめた。




私は呼吸をするのも忘れ、翼に見つめられた。









「・・・アーヤが、彩が、泣いちゃうから」









絞り出すように発された声。




堪えきれなくなったように、私の目からも涙が落ちる。









「・・・ほら、また泣かせちゃった」









私はひたすら首を横に振った。




違う、違うよ翼。




翼のせいじゃないの。









「わ、たし・・・っ、私が、弱いから」









漏れそうになる嗚咽を噛み殺す。









「・・・彩は、強いよ。俺なんかより、ずっと」









翼は目を細めながら私の頬を撫でる。




まるで、自分は弱いから と言うように。









「そんな事ない・・・！ 私は泣いてばかりだし」









ずっと、泣いてるばかりで。




翼の為になにもしてあげられなくて。




翼から、逃げてるばかりで・・・









「ただ、怖がってて・・・」









どんなに覚悟を決めても、結局最後は怖がってる。









・・・臆病者









今の私には、この言葉がピッタリだった。









　









「・・・彩は、臆病なんかじゃないよ」









　









翼が、私の心を読んだように言った。




はっきりと、力強く。




それと同時に翼は口を開く。




酷く、自嘲気味に。









　









　









「・・・誰よりも臆病なのは、俺だから」

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