温もり むそじ あまり ななつ ページ17
*
「昨日は階段から落ちちゃったり、足の小指をぶつけたりしたから」
翼のベッドの前でこんな事を話している私はおかしいと思う。
翼は相変わらず固まったまま。
その隙にベッドの側に置いてある椅子に腰かけた。
「・・・なにしてるの」
「椅子に座ったの」
小学生のような返事をする私に翼は戸惑いを隠せていなかった。
怪訝そうに眉をひそめ、私を見ている。
「・・・誰?」
・・・そこまでとは思ってなかった。
「立木でもないし、立川でもない、立花です」
皮肉を込めて『ハート虫は知っている』の時の言葉を言った。
そう、翼と初めて話した時の言葉。
「あー・・・」
翼が思い出すように遠くを見つめる。
私はクスッと笑って口を開いた。
「思い出した? とっても鼻がいい美門君」
「・・・そんなキャラだっけ」
昔のような呼び方で、タイムスリップしたように感じる。
初めて会った時は本当に驚いたんだ。
こんなにきれいな男の子を見たことがない、って。
少し笑いながら口を開いた。
「ふふ、それじゃあお話しようか」
「来るなって言ったんだけど」
「言ったでしょ? 覚えてないって」
「じゃあ今言った。帰って」
「ごめん、聞いてなかった」
「アーヤ、いい加減にして」
翼が突き放すような声色でこっちを見る。
少しだけ狼狽えてしまった。
けど、もう逃げない。
「・・・やっと、名前呼んでくれた」
小さくそう呟くと、翼はハッとしたように息を呑む。
やってしまった、と言うように。
「そんな露骨に嫌な顔しないでよ」
「・・・ごめん」
・・・謝らないでよ。
「ねぇ、翼」
「帰って」
私が口を開くと、被せるように翼が言った。
「やだ」
「帰ってってば」
「いや」
「帰れっ!」
急に翼が怒鳴るような声をあげる。
私は驚き、ビクッと肩が跳ねた。
ここまで翼に強く言われたのは初めてだった。
私は拳を強く握ると、翼を真っ直ぐ見つめた。
「話すまで、絶対帰らない!」
「いい加減、素直になってよ翼!」
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時