温もり むそじ あまり よっつ ページ14
*
「あ、そうだ。ねぇ、彩ちゃん」
顔に集まった熱を逃がしていると、お母さんに声をかけられた。
「はい。なんですか?」
お母さんは少し躊躇う。
え、なんだろ・・・?
言いにくい事なのだろうか。
「あの、翼に、会いに行ってくれない・・・?」
突然言われた言葉に動きが止まった。
それと同時にチクリと胸が痛む。
少し目を伏せた後、口を開こうとした。
「あ・・・っと、無理なら全然いいのよ」
お母さんが困ったように微笑み、両手を横に振る。
私は違う、と言うように首を振った。
「実は今日、翼に会いに行こうと思ってたんです」
お母さんは目を見開き、僅かに頷く。
「・・・そうだったの」
「あの、私がここに来たのも、翼について話したくって・・・」
頻りに視線を動かしながら言葉を重ねる。
「翼に“来なくていい”って言われて、会いに行きにくくて」
お母さんは黙って話を聞いてくれた。
私がどう思ったのか。
どうするべきなのか。
悩んでいたことを全て打ち明けた。
「・・・翼、そんな事言ってたの」
お母さんは少し考え込み、やがて顔をあげた。
「会いに行きなさい」
キッパリ、堂々と言い放った。
私はポカンとお母さんを見る。
てっきり、少し時間を置いた方がいいと言われると思っていた。
「彩ちゃん、今までたくさん翼にワガママ言われてきたでしょ?」
まぁ、と頷けばお母さんはニヤリと笑った。
「たまには彩ちゃんもワガママを言いなさい」
「・・・え、っと?」
よく分からないで首を傾げるとお母さんはズイッと身を乗り出す。
「“会いたい”ってワガママ、翼に思いっきりぶつけてきてね」
私は促されるように頷いた。
お母さんは私が頷いたのを確認すると、背中をグイグイと押す。
「え、あの、お母さん・・・?」
「ほら、早く早く」
リビングから玄関まで私を押すと靴を履くように言われる。
「あの、よく分からないんですけど・・・」
「いい? 彩ちゃん。思い立ったら即行動よ」
靴を履くと、傘を押し付けられた。
・・・え、まさか。
「病院までの道は覚えてる?」
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にゃ〜 - アーヤと、翼のお母さんが、最後の最後まで翼を信じるところが感動しました! (1月8日 21時) (レス) @page50 id: 26a4d90e30 (このIDを非表示/違反報告)
みみー - 泣いちゃいました!読み終わった後なんかもうぼろくそに泣きました!作者様様へ、感動する話をありがとうです! (2021年3月24日 11時) (レス) id: 76382fa356 (このIDを非表示/違反報告)
ピュア - 感動しました! 色々なところで、泣きました (2021年1月5日 20時) (レス) id: 75738b8618 (このIDを非表示/違反報告)
yukko08(プロフ) - 翼が彩に抱きしめてと言ったところで泣きました 作者様に感謝です! (2020年5月4日 19時) (レス) id: 85514eea1d (このIDを非表示/違反報告)
K - リクエストを書いてもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 (2019年9月6日 6時) (レス) id: 70bbe6910f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年3月22日 15時