貴方の腕の温もりが

温もり むそじ あまり ひとつ ページ11

「愛して、あげて。かぁ・・・」









お母さんから言われた言葉を思い出しながらもう一度ベッドに倒れこむ。




そして、枕に顔をうずめた。









・・・私は、翼を最後まで愛せたのだろうか。









あの頃の私は精一杯、自分が注げる愛を翼に注いでいた。




けれど今になって思い返すと不安になる。




翼がくれた愛と同じくらいの愛を、私は翼に返せていただろうか。




翼は私をとても愛してくれた。




自分が大変な状況でも、私の事を想ってくれていた。









じゃあ、私は？









私は翼になにが出来た？




最初から最後まで、ずっと翼の側にいた？




翼の事をずっと信じていられた？









・・・いいや、出来なかった。









翼に突き放された時、私は翼の側を離れた。




翼がなにを考えているのか分からなくて、信じられなくなった。




私は翼から逃げた。









何度も、ということはない。




たった１度だけ。




いや。









・・・１度も、逃げた。









どうして側にいてあげなかったんだろう。




どうして信じてあげられなかったんだろう。




・・・どうして、逃げたんだろう。









好きな人なのに。




愛してる人なのに。









結局、私はうわべだけの人間なのかもしれない。




私は嘘つきなのかもしれない。




お母さんの想いに、全く答えれてないのかもしれない。









　









「ねぇ、翼」









　









私は、翼を愛せてた?









　









・・・自分じゃ、いくら考えても分からないよ。




自分で自分が分からなくなっちゃった。









真っ暗で、答えなんかどこにもなくて。




答えを教えてくれる人もいなくて。




ただただ、疑問を叫んで。




その答えをがむしゃらに探してる。




・・・けど、答えは全然見つからなくて。









　









　









「た、すく・・・」









　









　









気付けば、貴方に助けを求めていて。









　









　









『・・・なんでしょ？』









　









　









返ってくるはずのない言葉を探してる。









　









こうしてまた、貴方に溺れていくんだ。

温もり むそじ あまり ふたつ→←温もり むそじ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す