温もり みそじ ページ30
*
「どう、したの」
急に謝られると、どうしていいのか分からなくなる。
「俺の事、聞いたでしょ?」
何を、なんて聞かずとも分かる。
私は黙って頷いた。
「ずっと黙ってるつもりはなかったんだ」
翼は目を伏せて、話し続ける。
「いつか、話さなきゃいけないと思ってた」
私はまたしても黙って頷く。
「でも、話す前に倒れるとは思ってなかったから」
そう言うと、翼は目線をあげて私を見つめる。
その瞳には気遣うような光が浮かんでいた。
「驚いた、でしょ・・・?」
翼が倒れたときの事を思い出して、手が震える。
スカートの裾を握りしめて、口を開いた。
「うん・・・」
私は視線を落として、床を見つめる。
「それに、怖かったよ・・・」
唇を噛み締めて泣くのを堪える。
「このまま、翼がいなくなっちゃうんじゃないかって・・・」
あの時は、胸が押し潰されそうになった。
本当に・・・
「本当に、怖かったんだよ」
堪えきれなくなり、涙がスカートにシミを作っていく。
涙を拭っても拭っても、止まらない。
「あっ・・・」
すると、翼に腕を引っ張られて抱き締められる。
「た、すく・・・」
力一杯抱き締められて、少し苦しい。
けれど、口には出さなかった。
この力強さが、心地よかったんだ。
「温かいね」
翼の体温をほとんど直に感じる。
今、翼は生きているんだ・・・
そう思うと、さらに涙が溢れてくる。
翼が、もう長くは生きられないなんて。
翼が、病気だなんて。
そうは思えないほど、温かかった。
「ねぇ、本当に・・・」
聞いちゃいけない事なのは、分かってる。
けれど、聞かずにはいられなかった。
「本当に、死んじゃうの・・・?」
今、こんなに温かいのに。
今、こうやって抱き締めてくれているのに。
本当に・・・
「そう、みたい・・・」
そう言った翼の声は酷く震えていて。
酷く、弱々しかった。
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ミラゴン - もう、感動して涙が止まりません。こんなにも感動する話は、こんなにも涙が止まらない話は初めてです。改めて恋、友情、そして、命について、考えさせられるお話ですね。また更新されるのを心待ちにしています。 (2019年2月25日 20時) (レス) id: 5ed9be59f6 (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - ありがとうございます!では、載せますね。お返事ありがとうございます。 (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - Kokone♪さん» Kokone♪様、初めまして。わぁ、お誘いいただきとても嬉しいです!全然構いませんよ。わざわざ報告していただきありがとうございます! (2019年1月15日 19時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - smireさん、はじめまして。私、kokone♪申します。こちらの作品を、『泣けるお話、集めてみました。【探偵チームKZ事件ノート】』という私の作品に載せたいのですが、よろしいでしょうか。本当に泣けるお話なので、是非とものせたいです。お返事、待っています。 (2019年1月15日 17時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
smile - クローバーさん» クローバーさま、コメントありがとうございます。時には更新をしなかったり、一度に大量更新したりと不規則でしたが、ついに続編までいけました…(汗) 応援ありがとうございます! (2018年3月27日 15時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年2月23日 18時