温もり ここのつ ページ9
気が付けば、翼は消えていた。
僅かな温もりと、匂いを残して。
また、消えてしまった。
いなくなってしまった。
「夢、覚めちゃった」
あの夢からは、覚めたくなかったのに。
時計を見ると、もう8時。
今日は土曜日だから学校もない。
私は浜田高等学校に通う高校2年生。
でも、この春で3年生になる。
大学受験の為、秀明も高等部に入り、通い続けている。
KZも一応続いている。
私はあの時から行ってないけど、今も活動しているんじゃないかな。
「よい、しょ」
重たい体を起こして、部屋を出る。
涙でグチャグチャになった顔を洗いたい。
「あら、アーヤ遅かったわね・・・あっ」
ママは、私と翼の関係を知っていた。
“素敵な人じゃない”と褒めてくれた。
だからこそ、私達の結末も知っている。
私の気持ちも、分かってる。
「早く、顔洗ってらっしゃい」
気遣うような視線と共に、顔を洗うよう促される。
「うん」
洗面所に行って、初めて鏡を見た。
「酷い、顔・・・」
蛇口をキュッとひねり、冷水を出す。
現在は2月下旬。
まだ寒いけれど、冷水が良かった。
「ふぅ・・・」
水気をタオルで拭き取り、リビングに向かう。
少し遅いけれど、朝食を食べ始めた。
「ご馳走さまでした」
食器をさげて、部屋に戻ろうと踵をかえす。
「彩、ちょっと待って」
ママに呼び止められ、足を止めて振り返る。
ママが顔色を窺うようにして、口を開いた。
「今年も、ダメそうなの・・・?」
しばらく考えて、ママを見る。
「分かんないけど、行けたら行ってみるね」
最後に安心させるよう微笑んで、部屋へ向かった。
あぁ、今年もそんな季節か。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミラゴン - もう、感動して涙が止まりません。こんなにも感動する話は、こんなにも涙が止まらない話は初めてです。改めて恋、友情、そして、命について、考えさせられるお話ですね。また更新されるのを心待ちにしています。 (2019年2月25日 20時) (レス) id: 5ed9be59f6 (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - ありがとうございます!では、載せますね。お返事ありがとうございます。 (2019年1月15日 20時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - Kokone♪さん» Kokone♪様、初めまして。わぁ、お誘いいただきとても嬉しいです!全然構いませんよ。わざわざ報告していただきありがとうございます! (2019年1月15日 19時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
Kokone♪(プロフ) - smireさん、はじめまして。私、kokone♪申します。こちらの作品を、『泣けるお話、集めてみました。【探偵チームKZ事件ノート】』という私の作品に載せたいのですが、よろしいでしょうか。本当に泣けるお話なので、是非とものせたいです。お返事、待っています。 (2019年1月15日 17時) (レス) id: 1acdcbf3ab (このIDを非表示/違反報告)
smile - クローバーさん» クローバーさま、コメントありがとうございます。時には更新をしなかったり、一度に大量更新したりと不規則でしたが、ついに続編までいけました…(汗) 応援ありがとうございます! (2018年3月27日 15時) (レス) id: d18177599f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:smile | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Niko-hp/
作成日時:2018年2月23日 18時