6話 ページ8
その日の夜、珍しくセブルスが家に帰ってきた。
毎年この日は新学期の準備に忙しくクリスマス休暇まで帰ってこないというのに。
セブルスがチラッとこっち目をやると何故か満足げ口角を上げた。
『セブルス？』
「魔法薬学の教科書を読んでいたのか。」
『うん。1年の教科書のレベルってどのくらいなのかなって思って。』
セブルスが魔法薬学の先生であるため、家にあるそれについての本の数はかなりのもの。
【フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店】に置いてあった魔法薬学の本は大抵家にあったと思う。
見覚えのある背表紙ばかりだったから。
家にある本の中にはセブルス独自の訂正が書き込まれていたものもあったので、それを含め、教科書の内容は大体は覚えた、はず。
ただ、家での調合は禁止されており、器具も家になかったので知識しか付けられなかったことが残念だと思う。
"入学するまでに1度くらい簡単な薬を作りたい。"
それを前に言ったら「Aなら授業に十分についていけるはすだ。知識なら申し分ないだろう」と言われてしまった。
まぁ、確かに魔法薬学の本を読むのは楽しいし、苦じゃないんだけど、調合がしたいと思うのは子供特有の好奇心のせいである。
「どう思った？」
『んー、実際に作ったことがないから分からないけど、このぐらいのレベルならある程度は教科書見なくても大丈夫そう。それにこの教科書前から思ってたけどちょっと分かりにくい所があるよ。』
「言っておくが、その教科書が一番簡易だ。」
『え、本当に？もうセブルスが教科書書いちゃえば？』
これは冗談ではなく、本心だ。
本にあったセブルスの書き込みはすごく的確でわかりやすかったから。
「そのつもりはない。しかし、これなら魔法薬学は大丈夫そうだな。明日は新学期なのだから早く寝ろ。10時でいいな。」
『えっ、送ってくれるの？』
「当たり前だろう。ここからどうやって行くつもりだ。」
『特に考えてなかった…。』
「はぁ。10時でいいな？」
『あ、10時半に駅で待ち合わせがあるから10時半前がいい。』
「分かった。では我輩は1度学校に戻る。」
『了解！セブルス、おやすみ！』
「おやすみ。」
セブルスはこのことを言いにわざわざ家に帰ってきてくれたらしい。
「おやすみ」と挨拶してくれたことをセブルスを知っている人に言ったらみんなびっくりするだろうなぁ。
明日はようやく待ち焦がれた入学式。
楽しみだな。
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作者名：新井乃愛 | 作成日時：2020年2月16日 0時
