私昔のこととか覚えてないんですけど。 (ページ29)

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様々な死刑ページ29

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ガラス張りの昇降機から周囲の楼閣が消えていくのを見ながら、Aは遺言書の文面を考えていた。

朝食を済ませていざ学校へ行かんというところで首領から連絡が来たのである。

電話を切ってからマフィアの楼閣のドアをくぐるまでの記憶がない。

動揺しすぎて遅刻連絡もしてないし、制服のまま来てしまった。
誰かに見られてないといいけど。

首領に会ったのは異能訓練の師の通告、という名の死刑宣告を受けたのが最後だ。

今まで、大きな任務がある時も、昇進の時だって首領から声をかけられたことはない。

となると、用件は絞られる。
マイナスの方に。

溜息すら出てこない。

もう嫌だ。

此方の気分とは裏腹に、昇降機はチン、とベルを鳴らして目的階に着いたことを知らせた。

無理矢理足を動かして執務室の前に立った。

「……首領、安部です」

駄目だ、声が掠れた。
そう思ったその時。

「這入り給え」

重く、声が響いた。

あ、今日はエリス嬢と遊んで(追いかけまわして)ないんだ、と余計なことを考えながら、扉を押す。

「失礼します」

どんだけ考えても結果は変わんねえよな、と考えることを放棄したAは、半分死んだような眼になって首領の前に立った。

「よく来たね。……老けた？」

今のはどう考えても余計な一言だろ、と喉まで出かかったのを押しとどめた。

残念なのかめでたいのか、彼の守備範囲から脱したらしい。

「……そうかもしれません。ご用件を」

半ばやけくそになって先を促せば、首領は困ったような表情を浮かべて口を開いた。

「死刑宣告ではないから、もう少し肩の力を抜きなさい」

どうやらAの心の内を読み取ったらしい。

Aが驚くのに笑みを浮かべると、爆弾発言、及びこれまた立派な死刑宣告を下した。

「君は今日から一組織の長だ。大出世、おめでとう」

……何がおめでたいのか。