番外編?:独り歩む another story ページ15
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どうやら帽子幹部中原はこの人の群れに気づかれることなく、防犯カメラを破壊し、トンネルの闇に姿を紛れさせたようだった。
「……流石」
Aが呟く。
堀も囁いた。
「せーの、で行こう」
「え」
「人の視線をよく見るんだ」
二人は人知れずホームの端に移動した。
「行くよ。……せーの」
その瞬間、一番近いところにいたサラリーマンの首が動いた。
「やば」
ホームの下の窪みに身体を滑らせる。
Aは必死に口パクで"危ない"と伝える。
すると堀も"幸田さん"とだけ伝えてきた。
これにはAも黙るしかない。
なんだかんだで無事にトンネルに入り込むと、線路に沿って小走りに急いだ。
「……文ちゃんの痕跡は?」
「まだない」
コツコツと足音だけが響く。
「あ?A?」
上から声がした。
二人が同時に首を動かすと、其処には逆さに立った中原がいた。
「なんでこんな処に」
「……此方の科白ではあるんですけれども」
中原は一旦身体を戻した。
「例の爆弾魔が出ると聞いた。その様子見だ。ポートマフィアの縄張りを荒らす奴を見過ごすわけにはいかねェからな」
「え、爆弾魔……」
二人の顔から一斉に血の気が引いた。
「……如何した」
「ど、如何したもこうしたも、幸田さんの娘さんがこの駅で行方不明になって、それで……」
「幸田?……あァ、手前ン処の」
中原は少し考えた後、再び口を開いた。
「ま、もう少し歩けばわかるんじゃねェの」
そう言って亦逆さまになると、奥へと歩いて行ってしまう。
慌てて追いかければ、話し声が聞こえてくる。
警戒しながら進むと、やがて三つの人影が見えた。
うつ伏せになった青年と、それから抱き合う男女……
「……なんか、あの男の人国木田さんに似てません?」
「国木田って、武装探偵社の?」
Aの目が女性の特徴を捉えると、一気に視線が冷えた。
「あれは……」
「待てA。その勘違いだけは勘弁してやって呉れねェか」
女の子だった。
「否、勘違いも何も、現行犯……」
突然、爆発音が響いた。
一瞬何が起こったかわからず、中原から視線を戻す。
「え……」
人影は、煙に隠れて見えなくなっていた。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年10月1日 22時