人虎発見 ページ13
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「そもそも変なのだよ。経営が傾いたからって、そんな理由で養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。いや第一に経営が傾いたのなら、一人二人追放したところでどうにもならない。半分くらい減らして、よその施設に移すのが筋だ」
流石は元マフィア幹部、名推理だ。
私じゃきっと思いつかない。
「君がこの街に来たのが二週間前。虎が街に現れたのも、二週間前」
そこで中島さん改め人虎がそれはもう綺麗なお月様を視界に入れる。
「君が鶴見のあたりにいたのが四日前。同じ場所で虎が目撃されたのも、四日前。国木田君が言っていたろう。武装探偵社は、異能を持つ輩の寄り合いだと」
やがて人虎が苦しみだした。
なおも太宰さんは平然と話を続ける。
「多分施設の人たちは虎の正体を知っていたが、君には教えなかったのだろう。君だけがわかっていなかったのだよ。君も異能の力を持つものだ。現身に飢獣を降ろす月下の能力者」
完全に虎になった人虎が太宰さんに襲い掛かる。
それをひらりと飛んでかわす太宰さん。
私の憧れの攻撃のよけ方である。
中也さんに格闘術はマフィアでも中堅以下と言われているワカメのくせにとりあえず脚力が凄まじいと思う。
あと、『人間失格』も使ってみたいのだけれどまあ、無理だよね。
無効化されちゃうもんね。
そんな太宰さんの動きに見惚れているうちに闘いは終わったようで、カメラを止めた。
「男と抱き合う趣味はない」ってやつ入っちゃった。
とりあえず探偵社の4人が向こうへ行ったので喰いちぎっていた空間をすべてつなげる。
そして深呼吸。
息苦しいことこの上ない。
一つしかない狭い穴をカメラでふさいでいたのだから当然と言えば当然だが。
しばらく6人の様子を傍観していたが、頭にある馬鹿みたいな考えがよぎった。
…マスクすれば太宰さんにもばれないんじゃね?
せっかくこんな肝冷やしたのだから顔出すくらいはしたい。
いやばれたら処刑もんだけれども。
4年半も経っちゃってるし?
暗いし?
大丈夫っしょ(あほの子)
人虎が己の正体に気づいたところで静かに天井の柱に上る。
そして全員が私を認識したところで颯爽と去っていく。
…かっこよくね?(あほの子)
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時