割と危機 ページ12
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先ほどの通知というのは発信機が破壊されたというものである。
まあ、その発信機というのもすぐに壊れる安物だったので致し方ないが、壊された場所ぐらいはわかる。
「割と近いな」
近くの飲食店だ。
そのまま遠くに行かれて居場所がわからなくなれば元も子もないので、速足で急ぐ。
曲がり角で砂色が見えた途端、電柱に身を隠し、気配を消す。
案の定太宰さんと中島さんだ。
そのままストーカーのように後を追っていくと、着いたのは廃れた建物だ。
倉庫だろうか。
2人はその中に入っていく。
私も全く遠慮をせずにそのあとに続く。
2人には現時点で私の姿が見えないのだ。
原理はよくわからないが、私の考えはこうだ。
芥川さんの羅生門は空間を喰う。
その上で尚芥川さんの姿が見えるのは芥川さんが羅生門を使うのに慣れているからだ。
しかし、私は違う。
私が羅生門で空間を喰い破ると、光の通り道やら空気の通り道やらまで断絶してしまう。
よって相手から私の姿は見えないし、気配も感じない。
一見便利に見えるかもしれないが、副作用として私も周りが真っ暗になり、息も長くは続かない。
極めて厄介な副作用である。
改めて芥川さんの凄さがわかる。
ではどうやって私が移動しているのか。
必殺!
ちょっと空間をつなげる!
……要するにちょっとだけ視界を作るのだ。
そこがばれたら終わりだけど。
羅生門問題が解決(?)したところでもう一つ厄介なこと。
探 偵 社 の 変 人 が 勢 揃 い し て や が る
見つかったら死ぬわ。
殺されるわこれ。
いや私は今まであんまり表に出たことはないけど太宰さんにばれたら殺される。
「さて、そろそろかな」
今まで完全自 殺読本なるものを読んでいた太宰さんはそう言った。
空間が断絶しているといえど、こちらにこられると割とまずいので、探偵社の方々が勢ぞろいをしているところの隣にこっそり座らせてもらう。
カメラの用意はばっちり。
そこで、4人のうちの誰かが大きな音を立てた。
中島さんが転げ落ちる。
「きっと奴ですよ太宰さん!」
「いや…風で何か落ちたんだろう」
噓適当すぎるだろ太宰さんよ。
もう少し丁寧な嘘を言ってやれよ。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時