佐々城女史 ページ31
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「やはりあなたが『蒼の使徒』か、佐々城信子さん」
「そんな……!」
「思うに、あなたがその頭脳を犯罪に使うのは、初めてじゃないね」
「あの人は理想に燃えた人でした。純粋に犯罪のない世界を望み、それ故に、自分の手を血に染めました。私はどうにかその理想を叶えてあげたかった」
「あなたの恋人、『蒼き王』は、法では裁けない犯罪者を、犯罪によって断罪する、理想主義者だった。今回の事件はその続きだ」
「銃をおろせ。こんなことをして何になる」
「おわかりになりませんか?あなたはどこか、あの人に似ています」
「あなたの計画は実にスマートだ。自らは何も罪をおかさず、探偵社を貶め、誘拐犯と犯罪組織を滅ぼしてみせた。けどあなた自身には、何の信念も理想もない。ただ流されていただけだ」
「もう疲れました。私は解き放たれたいのです。私を撃ちますか?太宰さん。でも、私は銃をおろしました。この状況で私を撃つと、過剰防衛になりますね。国木田さんたちが見ています」
「そう、この場にいる誰もに合法的に撃つことはできない。……でも」
佐々城女史が静かに目を閉じる。
そして、銃声が一つ。
それは、正確に急所を撃ちぬいていた。
「っ…!」
「非合法組織の者です」
そう言って静かに銃をおろす、人の命を奪うには幼い子供。
「…なぜだ。なぜこんなことになる!何が間違いだった!誰が悪かった!」
「誰も悪くない。この結果しかありえなかったんだ」
「黙れ!お前なら救えたはずだ!これが正しい結果だとでもいうのか!」
「正しさとは武器だ。それは傷つけることはできても、守り救済することはできない。佐々城さんを殺したのは、結局『蒼き王』の、そして君の正しさだ。国木田君。君がその理想を求める限り、いつか『蒼き王』の炎が君にも宿るだろう。そして周囲ごと焼き尽くす」
「それでも!それでも進んで突き抜けてやる。俺の理想をなめるなよ!」
その時、銃を落とす音がした。
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作者名:のーと。 | 作成日時:2018年2月6日 18時