■■ ページ8
「人生、そんなもんだよ。どんなに大切にしたって、どれだけ信頼を貰っていたって、なにかの拍子に報われない目に遭うんだ」
「さいあく」
なんてひどいことを言うのだろう。頑張ってきたこととか、毎日の出来事の共有とか、そういうものの力を万能と信じることが大切だと学ばせておいてこれだ。大人なんかこれだからあてにならない。真っ白なふわふわに潜り込み、そっと干渉を拒む。
「そんなこと言ってほしかったんじゃない」
「そもそも僕に言ってほしいことなんかひとつも無いんじゃない?」
その通りだ。だって自分はこの人にどうすればいいかなんて訊いてやしない。ただ、この部屋はこういう部屋だから、本当に信じていた相手に頼ってほしかった話を、あの子を助けたかったのに何一つできなかったわたしの話をしているのだ。答えのない問題を、この時間のあいだだけ触るのだ。
「生きてるってなに」
「死に際までそれの答えは出ないと思うなあ」
あの子は答えを出せたのだろうか。どんな答えだったとしても、きっと自分は気に入らないだろう。おそらく、ろくなものではないからだ。そのくらいはわかる。
あの子の答えが予想できてしまう結末に至ってしまったから、わたしは今も日常の送られるグラウンドに立つことができない。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←保健室問答
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ