もしもし冥途ちゃん！【文豪ストレイドッグス】

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『 ふふ、おいしいですか？ 』






「 ん…あまい… 」








顎をつきカウンター越しに鏡花を見つめるAはにこにこと上機嫌である



鏡花に振舞ったのはマシュマロが浮かんだ暖かいココア。それと敦の時にも出した彼女手作りの焼き菓子。クッキーである

先程とは打って変わった口の周りをココアで汚す鏡花の姿は年相応に見える。大人び過ぎている鏡花を、Aはあまり良く思わなかった


紙で鏡花の口元を拭うA。鏡花はさっきまでの警戒心は何処へやら、Aにされるがまま、なんなら自ら口元を擦り寄せているようにも見える








『 …ん、綺麗になりました 』






「 ありが、とう 」








ぽぽぽ、と頬をあからめる鏡花。頬を拭われたのが恥ずかしいのか、それともお礼を言うのが恥ずかしいのか。恐らく後者であろう、人に感謝されることを今迄してこなかったのだから



どういたしまして、と返す。その時、また扉の鐘がからんからん、となった








『 あ、龍之介くん。おかえりなさい 』






「 っっ！ 」








″ 龍之介くん ″、″ おかえりなさい ″。芥川はこの2つの単語にグッと来てしまった。まるで新婚みたい、だと。どきどきと高鳴る胸を抑えながら鏡花に視線をよこす。…さすれば鏡花はやつがれらの娘か…悪くない。芥川は澄ました顔で頷いた








「 んん…ただいま 」






『 うん、おかえりなさい 』






「 …ただいま 」






『 ふふ、何回言うの？ 』








くすくすと笑うAに対し、芥川は必ずAを嫁に貰うと心に決めた。この短時間で如何したのか、この男は。芥川はぶんぶんと頭を振って取り敢えずこの話題を頭から抜き、鏡花を呼んだ








「 帰るぞ 」






「 …はい 」








鏡花がまたすん、と数時間前と変わらない虚無の表情に戻った。Aはそれを見てカウンターから出た








『 …鏡花ちゃん 』






「 …？…わ、 」






『 またおいで、くださいね 』








鏡花をぎゅ、と抱きしめて言葉を紡ぐ。頭を撫でたり、強く抱き締めたり。そんな2人を羨ましげに唇を噛む男がいたり



ぱ、と鏡花を離すと彼女の顔は真っ赤であった。意外と照れ屋さんなのかな、と微笑む。「 約束、 」と出された小指に自分の小指を絡めるとふわり、と今日初めての笑顔を見せた。なんだ、ちゃんと可愛く笑えるじゃないか。Aも鏡花を真似て、へにゃりと微笑んだ












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