秘密主義の魔女は水底へ……【ツイステ】 (ページ6)

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落ち着いてくださいページ6

「……失礼ですが、その店名は？」
「えっと……幸せの森(フォレスト･グラッド)、です」
「……っ！？」

　アズールさんがガタンと音を立てて立ち上がった。私は思わずビクッと縮こまってしまう。
　彼は本当に驚いた表情を私に向けてきた。

「四つヒトデの店じゃないか！！」
「よ、四つヒトデ……？」
「陸で言う“五つ星”のことです」

　ジェイドさんが補足してくれるけど、私はそんなの全く知らない。確かに満員御礼なことも多かったけど、海の中にも知れ渡るほど有名だったなんて……。

「……って、あの……うちのお店は陸にあるのに、どうして海の評価が付いてるんですか……？」
「まさか、ご存知ないのですか？フォレスト･グラッドは、かつて珊瑚の海にあったのですよ！？」

　大きな声を出すアズールさんを「少し落ち着いてください」とジェイドさんがたしなめる。

「え、ええ……すみません。あの店が陸に移ったというのは聞きましたが、まさか身近にその娘さんが居たとは……」
「そんなこと、僕は何も……お手伝いする時も、あまり人と接することなく厨房に居たので……」
「厨房に？へぇ……料理はお得意ですか？」

　このことは周りには話していないのだけど……アズールさんの尋問口調に「は、はい……人並み以上には」と素直に答えてしまう。

「それは良かった！」

　先程までの驚きの顔とは違い、晴れやかな表情を浮かべる彼。

「あなたをどう利用し……んんっ契約するべきか、考えていたのですよ。家が富豪ならば、良い金づる……失礼、契約相手になると思っていたのですが……」

　隠しきれない性格の悪さが怖い。彼からすれば、せっかく弱みを握ったのだから、とことん私を利用するつもりなのだろう。

「あなたには、モストロ･ラウンジの新メニューをいくつか考えて頂きましょう」
「メニューですか！？で、でも僕そんな……」
「最近はお客が多くて、人手も必要になってきました。ここで働きつつ、お客を飽きさせない新メニューを開発して頂きたいのです！」

　救いを求めるように振り返れば、そっくりな顔の二人がこちらを見て笑っていた。

「……ふふ、新メニューを思いつきました」
「なぁに〜ジェイド？」
「“シラウオのたたき”はどうでしょう」

　背筋が凍った。フロイドさんが同意する前に、気づけば私は土下座していた。

「ここで働かせてください」
「ふふん、良いでしょう」

　こうして、満足そうなアズールさんとの取引が終わった。