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「……離して、夜くん。」
本当に諦めきれなくなるから、と震える声で言うAをさらにぎゅっと抱きしめた。
諦めさせない。諦めて欲しくない。
「諦めなくていい。誰が何と言おうと俺はAが大好きだから。」
「でも……。」
「Aはまだ俺のこと、好きでいてくれてる?」
「そりゃそうだよ!夜くんが好き!いっちばん好き!」
「じゃあいいんじゃないかな、諦めないで。」
「……本当に?」
顔を上げて問うAを安心させるために優しく頭を撫でた。
さらさらして綺麗な柔らかい髪。
「もちろん。恋人でも、友達でも何でも?」
「……じゃあ友達からがいいな。」
「うん。Aがそれでいいなら。」
抱きしめていたAを離してまっすぐに見つめる。
「じゃあ『お友達』の夜くん!よろしくね。」
「よろしく。A。」
俺はこれでいいと思う。
友達から、最初からやり直してまた告白する。
ある意味振り出しに戻ったけど前とは違う。
「……あ、そろそろ時間。」
「えぇぇ!?じゃ、じゃあ……」
「じゃあ?」
「あ、アドレス交換してっ!」
「……はははっ!うん。いいよ!」
これまで散々色々言って気が抜けたのか凄く恥ずかしくなってきた。
「送っていこうか?」
「ううん。いいよ。夜くん気をつけてね!」
「Aも気をつけてよー!」
手を振ってそれぞれの目的地に向かって歩いた。
**
「お前、何ニヤニヤしてんの?」
「に、ニヤニヤはしてないよ!?」
「おー、まさかの彼女か、彼女なのかー。夜。」
「っち、違うから!」
帰った後画面を見ていると散々陽と新にいじられた。
「なんか夜、嬉しそうだね。」
「そう?」
「なんかすっきりしてるって言うか……?」
「そうだね……。すっきりはしたかも。」
浮かんだ満月を見ながら3人と話すのがいつもより何だか楽しかった。
*fin
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