. ページ5
「まふまふ。もしかしたら、なんだけどさ」
「やめてください」
じっと何か考え込んでいたそらるさんが、とても言いにくそうに口を開く。続く言葉の予想ができてしまった僕は、それを聞く前に拒む。
そんな言い方、どうしたって悪いことじゃないか。
僕が諦めたら、Aだって帰ってこれなくなってしまう。
「俺だって、考えたくないよ」
そらるさんが呟く。その声は震えていて、ひたすらに嫌な予感だけが離れてくれない。
「……まふまふの家にいこう。Aちゃんがいるかもしれない」
「いないって言ってるでしょ!!家は僕が探しました!でもいなかったから、雨の中駆け回って」
「ほんとに?」
僕の言葉を遮るようにそらるさんが言う。立ち上がる拍子に机を叩いていたらしく、マグカップが時間差で倒れた。
「本当に、家中くまなく探したのか?」
コーヒーは机の上に広がり、溢れる。床に敷かれた毛足の長いカーペットを染めてゆく。
そんなもの目に止まらない、みたいな様子で、そらるさんは僕の目を見つめた。声にならない声が漏れる。
「まふだって聞いたことあるでしょ」
「!」
嫌だ。聞きたくない。
逃げるように両手で耳を塞ぐ。これでもかと首を振る。
それでも、そらるさんの声ははっきりと耳に届いた。
.
「猫は死に際を見せない、って」
.
4人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
囀李 - 私の名前これさえずりと読みますわかるよね?でも、この曲私の心と同じで泣けるんですよね。 (2018年10月24日 20時) (レス) id: 00238eb098 (このIDを非表示/違反報告)
nmr_mai0128(プロフ) - ほんとに感動しました!もう読み終わったときに涙が止まらなくて...こんなすごい小説を書けるってすごいですね! (2018年10月19日 23時) (レス) id: df6b3d5650 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:有紀 | 作成日時:2018年10月16日 19時