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「おはよう。で、なんで急に掃除？」
「ん〜たまたま用があって入った時に、あまりに汚かったからな」
「またどうせ、変なもの作ろうとしてたんでしょ」
「変なものとは、失礼だな君！」
ぷんぷん、と自分で言う彼を部屋から追い出して、襖を後ろ手で閉めてから見上げて一言。
「やる気になっているとこ悪いけど、まずは朝食ね」
モップを拾い上げて、いかにも倉庫や物置のある方へ進んでいこうとする彼が振り返って「はぁ」と呟いた。なんでだよ、私がため息つきたいんだよ。
彼らは見た目がいくら人間だからといって、構造までもが同じじゃない。霊力を込めたり、刀剣を直したら怪我が治るという特殊さがあるように、男士らは食事を必要としないのだ。まあ詳しくは＿彼らも＿知らないわけだが。つまりはこのまま彼は掃除に行ってしまっても、お腹がすいたり不調を訴えたりすることはないのだ。
そう、‘彼‘は。
前でも述べたが、私は厨房の出入りを禁じられている。女子としてそれはどうなのかとは思うが、彼が作ってくれなければ＿たとえ中には入れたとしても＿まともな食事ができるとは思えない。
「ははは、君。俺がいないと本当に駄目だなぁ〜！！」
「はいはい、そうみたいですね」
かちゃかちゃとモップを鳴らしながら方向転換する彼の後を追いかける。これからお湯を沸かして、洗って、切って。まだまだ時間はかかりそうだが、文句を言える立場に私はいない。
彼のさっきの言葉は否定できない。私は、自分で言うのもあれだが、彼らに散々甘やかされてきた。今更一人になったところで、私にできることなどたかが知れているだろう。自分でも思うが、たしかに情けない。
けど、その点を心配してはいない。彼、いや彼らとここで一緒に暮らしている限りは間違いなく、安定した毎日を暮らせれるからだ。
この後に待っている掃除を想像しながら、伸びをして筋を伸ばしていく。私を気遣ったりせずに一歩一歩が大きなまま彼とはぐれないよう、小走りしながらその背を追った。
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