【刀剣乱舞】さあ、驚いてくれ。 (ページ27)

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　白いチョーク粉にまみれた黒板、無数のロッカーと隅の掃除道具。机やいすが一つも置かれていないものの、どうやらここはどこかの教室らしい。視線を下げれば、足元から数センチ先には、いかにも古そうな懐中時計が転がっていた。

　それには少し見覚えがあった。たしかあれは簡易時空転移装置とかで、こんなので未来に行けるものか詐欺じゃないかと過去の私が思った物だったはずだ。

「じゃあ、ひょっとして過去の私が未来に行った直後の時間に戻ってきた……とかだったり？」

「お見事です。同じ人間が同じ時代にいたらいけないように、またそこに存在した人間が消えてしまうなんてことがあったらいけないので」

「……それはそうとして、そろそろ記憶の修正に入ってもよろしいですか？このプロジェクトを了承してくださった、貴女とこの学校の先生方の記憶を消していかなければなりません」

　表情一つ変えず、彼はそう言い切った。顔にしわを寄せて、最後に笑ってはくれないだろうかなんて淡い期待はすぐに打ち破られた。

　それと同時に、もう忘れてしまうんだと思った。向こうで「記憶がなくなるなんて」と散々嫌がっていたのに、不思議と今は冷静に受け入れられている＿気がする。多分担当の彼が「彼らとの別れじゃない」なんて言っていったから、これから忘れてしまってもどこかで会えるような気がしたのだ。

　今回ばかりは保証してくれるものが何もないけど、そんな気がした。

「じゃあ、お願いします」
「はい、では失礼しますね……」

　でもやっぱりちょっと寂しくて。彼が小ぶりな機械を私にかざすのが薄っすら見ながら目を閉じて。

　その隙間から冷たい何かがつたうのを感じながら＿拭わないままに＿段々と靄のかかってくる記憶を噛みしめた。