いくらなんでも ページ42
「――明日は練習前じゃなくて、公演後?」
「ああ。すまないが片付けは頼む」
「大丈夫だよ! Aちゃんも司くんと一緒にいれる時間が増えてうれしいんじゃないかな!」
Aのお見舞いを済ませ、病院で咲希達と別れてからワンダーステージへ来ていた司。ショーの練習をしていた座員達と合流し、先程のことを話していた。
その流れで、次の日にも(メンバーは変わるが)咲希達を連れて病院に行くことになったため、ワンダショの面々にも報告をしたのだ。
「にしても……志歩と咲希の連れて来たい人って誰だ?」
「わかんないけど……わたしならリン達と会わせたいかな。明日は人がいるから無理でも、いつかスマホ越しに会わせてあげたら?」
「おお、妙案だな! あいつもきっと喜ぶに違いない」
寧々の発言に納得し、司はウンウンと大きく首を振る。
……が、それを聞いた類だけは少し複雑そうな顔をしていた。
「……司くん、一つ確認しておきたいんだけど」
「なんだ」
「学業やワンダーステージでのショーの練習に、観客の前でやる本番の公演。それに加えAくんのお見舞いまで――いくらなんでも多忙すぎるよ。君、ちゃんと休めているのかい?」
突然の問いに、司は一瞬きょとんとする。
しかしすぐに、「ああ」と短く答えた。
「もちろん休息は取っているぞ。心配させて悪かったな」
「そうか……。ならいいんだけれど……」
「オレはスターになる男だぞ? 体調管理ぐらいできて当然だろう! ……それに」
司はそこで一旦言葉を切ると、愛おしそうに目を細めながら、
「――今はAのためにできることがある。それだけで、オレは幸せなんだ」
そう言って、優しく微笑んでみせた。
119人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あきいろ | 作成日時:2022年9月18日 8時