いつの日か ページ39
「だから……うちで、一緒に暮らすことは、できないだろうか――いや、できませんか」
そう言って頭を下げると、父親は腕を組みながらしばらく考え込むように沈黙する。
そして、ゆっくりと顔を上げるとこう告げてきた。
「わかった、いいだろう。細かい手続きも父さんに任せておけ」
「！ ……ありがとう、父さん！」
司はぱっと顔を明るくさせる。咲希も嬉しそうに微笑んだ。
「なまえちゃんと一緒に暮らせるようになるの！？ どうしよ、アタシ二週間も待てないかも……」
「気持ちはわかるけど、必要なことなのよ。我慢なさい？」
「むぅ……わかった」
無事、家族全員の了承を得られたことに安堵し、自室に戻った司はベッドの上で天井を見上げていた。
思い浮かぶのは、先日のAの涙。
事故以前の記憶を取り戻したことで、自身の家族が既に亡くなっていることを思い出してしまったのだ。彼女の悲痛な叫びを思い出すだけで、司の心は締め付けられるような痛みを覚える。
もう、彼女に寂しい思いをさせるわけにはいかない。
いつの日か彼女が心の底から笑って過ごせようになるまで、自分が傍にいると決めたのだから。
「――よしっ」
気合いを入れるために両の掌で頬を叩き、勢いよく起き上がる。
……が、現在の時刻を確認してすぐ、再び横になることになった。
幸いにも翌日は学校のない日だ。ショーの練習に遅れるというメッセージを三人に送信して、司は布団を被り直した。
＊咲希ちゃんの登場に伴い、登場人物設定に咲希ちゃん→Aちゃん呼称用のひらがな表記を追加しました。お手数お掛けします！ こだわりたいのでね……
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作者名：あきいろ | 作成日時：2022年9月18日 8時
