聞いて欲しいこと ページ38
「さて――後は母さん達に話をするだけか」
自室の椅子に腰を下ろしながら、司は大きく息をつく。
余計な心配をさせないため、Aにはまだ家族の了承を得ていないことを伝えていない。
反対されるとは思っていないが、緊張はしてしまうものだ。
初めのうちは夕食後に話すつもりでいたものの、結局話すタイミングを掴みかねて結構な時間帯になってしまっていた。家族が寝てしまう前に話を済ませなければ。
「――父さん、母さん、咲希。こんな時間に集まってもらったのは、聞いて欲しいことがあるからなんだ」
「どうした司、改まって」
父親が不思議そうに聞き返す。母親も同じような表情でこちらを見る。咲希に至っては眠いのか、目を擦りながら欠伸をしていた。
いつまでも後込みしていてはいけない。司は覚悟を決めて口を開いた。
「――Aが見つかった」
「……！ 本当なの司！？」
「ほ、ホントになまえちゃんが！？」
母親の目が見開かれる。それまで船を漕いでいた咲希も、興奮気味に声を上げた。
「今は検査入院中なんだが身体の方に問題はなさそうで、二週間もすれば退院できるらしい」
「良かった……。本当に、無事でよかったわ」
母親は胸を撫で下ろす。その目尻には涙が浮かんでいた。
「会いたいな……ねえお兄ちゃん、お見舞い行けるかな！？」
「ああ、Aも咲希が来れば喜ぶと思うぞ」
「や、やった〜！」
無邪気に喜ぶ姿に、司も自然と頬が緩む。
それから、司は両親の方へ向き直る。
「そこで、なんだ。Aのご家族は二年前の事故で不幸に見舞われているから……彼女に身寄りがなくて」
「……そうか」
そこまで言ったところで、父親が短く呟く。司は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに続きを話した。
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作者名：あきいろ | 作成日時：2022年9月18日 8時
