25.無自覚、無意識 ページ46
「……なんで私はここにいるのっ!!」
人が行き交うシブヤの街。目の前にはなかなかシックな外見のカフェ。それはあいつから送られた写真のカフェとまったく同じ、というかまさにその店で、「行かない」と独り言を零したにも関わらず来てしまった自分に疑問を抱く。
「はあ〜〜……しんど……」
呟きつつ足を進めてカフェの扉に手をかけた。カランカラン、とベルの音が響いて、気づいた店員から笑顔で「いらっしゃいませー」と迎えられた。
「お一人様ですか?」
「えっと、友だ──……連れが入ってると思うんですけ、ど……」
言いながら店内を見渡して……見つけた姿に「あ、いました」と店員に声をかけた。ごゆっくりどうぞ、と言ってくれた店員に頭を下げて席に向かう。
相変わらずのニマニマ顔をぶん殴りたくなった。
「やっほー。迷子にならなかった?」
「殴っていいですか」
「物騒〜」
腹立つ。
けらけら笑うそいつの正面に座ってメニューを開く。とりあえず紅茶でいいかな。今日はレモンティーな気分。
近くを歩いていた店員を呼んで紅茶を注文する。視線を向かいに座るそいつに移せば、楽しそうににこにこと笑っていた。殴っていいですか。
「で、何の用?」
「ここのパフェ美味しいんだよ〜。食べる?」
「帰っていい?」
用件はなんだと聞いとるんじゃこっちはよ。
「ままま、そう焦らずに。あれから変わりないかなって思ってさ」
「熱出したって言ったと思うんだけど」
「災難だったね」
「この野郎っ……」
他人事だと思いやがって……。おかげでこっちは35歳の色気に殺られそうになったんだぞ……!
「そうじゃなくてさぁ、あれだよ、あれ。山田くんとはどうなのかなーってさ」
「一郎と? 特になんもないけど」
「ふぅん……」
お待たせしました、と店員が持ってきたレモンティーに砂糖を入れてかき混ぜた。紅茶の香りが鼻腔をくすぐってなんだか落ち着く。あー帰りたい。
「なんもない……ってことは、変わりがないってことかな」
「まあね」
「じゃあ相変わらず、壁は作ったままなんだ」
ぴたりと手を止めた。琥珀色のカップの中身から目の前のそいつに視線を向けると、そいつは変わらずにこにこ笑っていた。
……嫌な予感がする。
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ユズヒ(プロフ) - 夢華さん» うおおおおおすみませんご指摘ありがとうございます!!修正いたしました……!! (2019年2月17日 0時) (レス) id: 5bd3021ccb (このIDを非表示/違反報告)
夢華 - 一二三の苗字『奘』じゃなくて『弉』ですよ!因みに読みは『そう』です! (2019年2月16日 20時) (レス) id: ceff9b5b24 (このIDを非表示/違反報告)
luinn - 内容は面白いのに過去の(前世の記憶持ち)話があるから面白くなくなった。 (2018年9月23日 19時) (レス) id: e037ff0c35 (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - ユズヒさん» ありがとうございます!可愛い動物を前に可愛いしか言えなくなるのわかります...(語彙力の低下)一郎くんからのナデナデも最高でした!!ありがとうございますした!またリクエストの機会がありましたらリクエストさせていただきます!! (2018年8月4日 8時) (レス) id: 9a328a9f62 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - きらさん» お待たせ致しました、リクエスト作品が出来上がりましたのでお知らせ致します。ペットを世話する話、というよりかはペットをひたすら可愛いと言い続ける話になってしまいました……なぜだ……。リクエストありがとうございました! (2018年8月4日 2時) (レス) id: 5bd3021ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年6月29日 23時