16.独りぼっちを捨て去って ページ1
「壁、ねぇ……」
「ん? どうした? 壁?」
「んーん、なんでもなーい」
瞼を持ち上げて呟いた言葉に反応したのは私に右肩を貸してくれている一郎だった。ソファーに座り隣にいる彼の肩にこてりと頭を預けてぼんやりと見た視線の先は録り溜めていたであろうアニメ。画面の向こうで金髪碧眼の剣を持つ男の子は私の推しなのだけど、どうにも意識がそっちに行かない。
プロトタイプから流れるラップを聴いて数時間程たった今は午後8時半をちょっと過ぎた頃。
あの後、さあ帰るぞとなった私に「送ってってやんよ」と言ってくれた左馬刻さん(めちゃくちゃ優しかった。今度なんかお礼する)の申し出をどうにかこうにか断って夕方頃の電車に揺られてイケブクロまで帰ってきた。
慣れないことに動揺した思考と精神は、とりあえず一人になりたいと叫んでいたから家に直行。
っていうか、今更だけどマイク使ったラップってめちゃくちゃ精神ブン殴りに来るんだね。一郎達いっつもあんなんくらいながら戦ってたんだ。幼馴染なのになんにも知らないんだな私。
閑話休題。
ご飯食べてお風呂入ってゆっくりしてたんだけど、やっぱりどうにもこうにも落ち着かなくて部屋着で伊達眼鏡もかけず髪も結ばず山田家に来たのが8時前。ご飯食べ終わってお風呂に順々に入っていた彼らは嫌がる顔一つせずに私を家に上げてくれた。天使か? 天使だった。
「いちろー」
「あー?」
呼べば返事が返ってくる。前世じゃこうもいかな……かったわけではないけど相手の戸惑いはあったから、こんな風に普通に返事が来るのは嬉しいことだと思う。
「高校の時さー、私周りになんて言われてたとかわかるー?」
「なんだよいきなり」
質問に疑問を抱いた一郎がこちらを見た。聞こえていた三郎も視線をくれる。んー、と一郎の肩にうりうりと頭を擦り付けて(猫かよ)ゆるゆると口を開く。
「なんとなく? 特に意味は無い、んだけど。たまに気になるじゃんそういうの」
「ふうん。そういうもんか?」
「そういうもんよー。因みに一郎はね、雰囲気めっちゃ怖いけど実は優しいし顔がかっこいいって言われてた」
「なんだそりゃ」
「あとファンクラブとかあった」
「流石一兄です!」
フローリングに敷かれた絨毯? マットレス? に座ってきらきらとした目を一郎に向ける三郎は実に可愛い。天使かな? 天使だな。
はあ、とため息を吐いたのは肩を貸してくれてる幼馴染。
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ユズヒ(プロフ) - 夢華さん» うおおおおおすみませんご指摘ありがとうございます!!修正いたしました……!! (2019年2月17日 0時) (レス) id: 5bd3021ccb (このIDを非表示/違反報告)
夢華 - 一二三の苗字『奘』じゃなくて『弉』ですよ!因みに読みは『そう』です! (2019年2月16日 20時) (レス) id: ceff9b5b24 (このIDを非表示/違反報告)
luinn - 内容は面白いのに過去の(前世の記憶持ち)話があるから面白くなくなった。 (2018年9月23日 19時) (レス) id: e037ff0c35 (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - ユズヒさん» ありがとうございます!可愛い動物を前に可愛いしか言えなくなるのわかります...(語彙力の低下)一郎くんからのナデナデも最高でした!!ありがとうございますした!またリクエストの機会がありましたらリクエストさせていただきます!! (2018年8月4日 8時) (レス) id: 9a328a9f62 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - きらさん» お待たせ致しました、リクエスト作品が出来上がりましたのでお知らせ致します。ペットを世話する話、というよりかはペットをひたすら可愛いと言い続ける話になってしまいました……なぜだ……。リクエストありがとうございました! (2018年8月4日 2時) (レス) id: 5bd3021ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年6月29日 23時