【ヒプノシスマイク】大人びた幼馴染

10.ヨコハマまでの数十分 ページ29

なんだかんだで乱数さんからはマイクの調整代というのを貰っていない。流れと勢いで「調整代貰いますからね」とか言ってはいたが、そもそも【TDD】の時代から調整代なんて貰ったことないのだ。

理由としては、私は技術はどうあれ“自称”マイク技師だから。ほぼ趣味の延長線の域。
そもそも資格取得の試験があるかどうかなんてわからないけど、自称しているのには変わりがない。
そんな“自称”マイク技師の分際で代金を貰うなんておこがましいにもほどがあるし、それに元々この技術は一郎になにかしてあげたくて身につけたものだから、それが一郎や他の人の役に立っているならなによりというわけだ。


それと、普通に“信じてくれてありがとうございます”の意味合いで代金を貰わないようにしているというのもあったりする。
信じてマイクを渡してくれてありがとう、って意味でお金は貰わない。そういう風にしている。
……あ、でもその人の家での調整……つまりは出張なら交通費は貰う。
最初は断ってたんだけど、とある人が「子どもが遠慮するものじゃないよ」っていうのをメンバー全員いる前で言ってからはありがたくそれは頂戴するようにしている。


揺れる電車の中で、携帯を触りながらそんな考え事。ぽつぽつと人がいるのは昼過ぎだからかなぁ多分。
今日も天気はいいけど雲が少し多い空。

私は今、ヨコハマ・ディビジョンに向かっている。



…………なんか今、すっごいドラマの導入みたいなことしなかった？ 私。え、ちょっとすごくない？ 無意識でドラマの女優のモノローグみたいなのやったってこと？ やばくない？？ 脳内ドラマチックすぎるでしょ。
そんなしんみりしたのじゃないっての。うける。

一人で繰り広げる脳内会話(圧倒的矛盾)に思わず笑いそうになるのを耐えた。ここで笑ってしまっては変人のレッテルを貼られる。見ず知らずの、今後また会うかどうかすらわからない赤の他人しかいない車内だけど、ちょっとそれは嫌だ。

あと、この電車は数人分の椅子が通路を向いて縦に並んでいるタイプのもので、私の隣にはスーツを着たサラリーマンのお兄さんが座っている。どう考えても至近距離にいるこの人から痛い視線を向けられるのは本当に嫌だ。電車降りづらくなっちゃう。

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